傷落ちの雄花~③~ 変なわだかまりが抜けた青木は、ますます友人のように浩介に距離を詰めてきた。歳近い男同士、話が出来るのが素直に嬉しいのだろう。
ゆるりと二人だけの時間を重ねていくうちに、自然とお互いの緊張も取れて、青木も浩介も、互いに時折柔らかな表情を見せるようにまでなった。話が盛り上がればカラカラと軽快に笑う。「こんな笑い方をするのか…」新たな一面を知っていくことは、お互い当たり前に嬉しく思った。
一見似た者同士な二人にも見えるが、一方の青木はこの表情の裏では心が不安定になりがちで、先日のような貧血で倒れる程ではないものの相変わらず出血騒ぎは度々起こすし、買い物に出ればまた闇市で劇薬を入手しようとし、浩介に説教される始末…しかしいざ筆を持つと最大限の力を発揮する。今まで出会ったことのない、意外性に跳んでいて時には振り回される状況になることも何もかもが目新しく、浩介は一緒に居る時間と平行して青木の魅力にどんどん取り憑かれていった。
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