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    さかもと

    @sakane193
    ええっ!?この状態でも入れる保険があるんですか!?なものを投げてます。

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    さかもと

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    モブ一人称視点のジェイカリ(🌦️くん不在)
    以前週ドロで書かせていただいた話が楽しかったのと、🐬くんもなんだかんだ周りのモブとそこそこ仲良しだと嬉しいなという下心でやりました。
    楽しかったです!!!!!!!
    モブくんと🐬くんが話しているだけですが、根底にあるのは🐬🌦️です。

    #ジェイカリ
    jacari

    【偏光フィルター】(モブ一人称のジェイカリ)

     僕には昔からの趣味がある。フィルムカメラだ。
     初めてカメラに触れたのは、確か12歳の頃。実家に持ち込まれた売り物にもならない代物をどうにか修理してもらい、フィルムも入れずにシャッターを押した。扱いが意外と難しいことを知って、ムキになり勉強したのが13歳の頃。親の手伝いでお小遣いを稼ぎ、様々な種類のレンズやフィルムを買いそろえたのが14歳のころ。とうとう自分でフィルムを現像することを覚えたのが15歳だ。
     そして、クラスメイトのジェイドくんに、誕生日プレゼントとしてカメラをあげたのが数か月前。なんとなく好きそうだから、と贈ってしまったが、今思えば余計なことだったかもしれないと不安になったのが二カ月前。完全に余計なお世話だったかも、と同じ寮の友人に愚痴をこぼしたのが一か月前。そして、聞きたいことがあると言って呼び出されたのが数日前だ。
     確かに僕は出席番号が近いから、クラスの中ではそれなりに話す方ではある。だが、ジェイドくんから僕へ言いたいことは、特に無いだろう。それとも、僕が気付かないだけで、何かあっただろうか。なんて、ここ最近の出来事を思い返すが、心当たりがない。同じ寮の友人からは、「ご愁傷様」なんて言われる始末だ。
     鉛みたいに重い足でも、引きずって歩くなんてみっともない真似をしたくない。無理やり背筋だけでも伸ばせば、サムさんの店の前で封筒を手に不満げなジェイドくんを見つけてしまった。

    「ああ、遅いですよ。」
    「いや、約束の時間ピッタリのはずなんだけど。」
    「おやおや、5分前行動をご存知ないですか?」
    「はいはい、すいませんでした。」

     思わず同じ寮の友人と話すような口調になってしまった。しまったと思う頃には、言葉は口から出た後だ。何か言いたげなジェイドくんの間が怖い。だが、彼は特に何も言うことは無く、そのままベンチに腰を下ろす。隣に腰を下ろせば、ジェイドくんは持っていた鞄から一冊の本を取り出した。

    「ちょっとこれを見て頂けますか?」
    「え、なにこれ…」
    「アルバムですよ。」

     アルバムとジェイドくんが結びつかなくて、一瞬戸惑ってしまった。が、言われた通り中を開けば、頑張って撮ったであろう写真が沢山まとめられていた。始めたての頃に撮ったであろう、ちょっとぶれたテラリウム。それから、山の中で撮ったらしいキノコや花。それから、何かに食べられて骨になった動物や、小動物の写真も混ざっていた。
     しばらくめくれば、今度は人物を被写体に選んだものが増えてきた。最初は同じ寮のアズールくんや、フロイドくん。よく一緒にいるところを見るので、おそらく仲がいいのだと思う。身近な人物の写真でも、被写体によってだいぶ差がある。
     アズールくんはどの角度から撮ってもキメ顔をしているからか、スマホのフィッシング広告で出てくる胡散臭い社長みたいになっている。反対に、フロイドくんは薄目だったり、ぶれていたりと、あまり落ち着かないようだった。バスケをするフロイドくんに至っては、撮影時のシャッタースピードが遅かったのか、残像のようになっていた。
     もう少しめくれば、クラスの中で撮ったらしい写真が何枚か混ざっていた。ハーツラビュルの寮長、リドルくんの写真や、サバナクローの子の写真。撮られた覚えはないけれど、僕の写真も入っていた。リドルくんの写真は笑顔がぎこちなくて、サバナクローの子の写真はちょっと動きが多いのかぶれていて、僕の写真は何故か白目を剥いていた。こんな写真、アルバムにまとめないで欲しい。
     そして、人物を被写体に選び出した頃から結構な頻度で入っているのが、スカラビアの寮長、カリムくんの写真だ。人物画を撮り始めた頃の写真では髪が白飛びしてしまっているが、僕らクラスメイトの写真を撮る頃には、だいぶ上達していた。なんなら、カリムくんの初期と後半の写真だけで、ジェイドくんの人物画撮影における技術の向上が分かるくらいだった。

    「これすごいね…」
    「ありがとうございます。」

     素直な誉め言葉が出てしまう程、すごかった。どうやら彼は、はまり込んだらのめり込むタイプらしい。少しずつ色味が違うのは、フィルターだろうか。それとも、ライトか何かを使ったのだろうか。まさかフィルムカメラで撮ったわけでもないだろう。ジェイドくんのことだから、あんなボロいカメラ、貰った時点で捨てているだろうし。
     なんにせよ、呼び出された理由は分からないが、びっくりするほど美しい写真だった。

    「この写真とか、すごく上手だと思う。」

     そう指さしたのは、最後のページの写真だ。普段の快活な笑い方とはまた違う。まるで愛しいものでも見るような、そんな笑い方をしたカリムくんの写真だった。海を思わせる部屋の内装的に、おそらくオクタヴィネル寮。ということは、ジェイドくんの部屋だろうか。青と紫でまとめられた部屋の中で、赤い瞳が美しく映えていた。
     僕が見てもいいものなのか、ちょっと不安になってしまう。もしかして、今日呼び出されたのは誰かに自慢したかったのか?だから以前カメラを渡した僕に話を振ったのか?それともまた、別の意図が?なんて勘ぐってしまう程に、その写真は美しかった。
     恐る恐る、ジェイドくんの顔色を伺う。怒っているだろうか。それとも、無表情でこちらを見ているだろうか。なんて、ひとしきり頭の中で起こりうる事態を想定しながら隣を見る。が、どの予想にも反して、彼はなんだか面白い顔をしていた。
     嬉しいような、不満なような。そして、ちょっと気恥ずかしいような。そんな色んなものがないまぜになった顔をするのは、彼にしては珍しい。一瞬見えたすまし顔の下は、想像よりもずっと同い年のクラスメイトだった。身構えていた分、なんだか拍子抜けしてしまう。

    「ええ、いい写真でしょう。」
    「うん。まるで恋でもしてるみたいな…」

     思わず、口をついて出てしまった。が、仕方ないと思う。最初に撮影されたものよりもだいぶ実物に近付いた、ガーネットを見ればそうも思ってしまう。この赤色を出すために、どんなフィルターを使ったのだろう。考えを巡らせるが、分からない。けれど、単純な赤とはまた違った彼の瞳を、これだけ綺麗に映す執念は最早恋だ。
     被写体のどこが好きなのか。どこを撮りたいのか。写真はジェイドくんが思っている以上に雄弁だ。だからこそ、撮影者のこだわりが出る。殴られようが、海に沈められようが、この主張は変えない。そんな思いを込めて目を向ければ、ジェイドくんは驚いたように目を丸くして、それから楽しそうに笑った。

    「ええ、初恋なんです。」

     その言葉を聞いて、最初に落ちてきた感情は納得だった。正直なところ、ジェイドくんとカリムくんの接点を、僕は知らない。そこまであるような感じはしないが、きっと当人たちしか知りえない何かがあるのだろう。なにより、心底幸せそうに笑うものだから、全てどうでもよくなってしまった。
     なぜあの写真が美しかったのか、今ならちょっと分かる。朧げな恋心を切り取ったら、あんな画になるのだろう。そして、それを思い出すジェイドくんが、普段のすまし顔が消えて楽し気だったから。きっと、今僕がカメラを持っていたのなら、思わずシャッターを切ってしまう。そう思わせるほど、美しかったから。呼び出された理由なんて分からないけれど、それでいい気がした。

    「だから、もっと綺麗に撮りたくて、カメラに詳しそうな貴方を呼んだんです。」
    「そうだったんだ…」
    「ええ。もっと綺麗に赤を映すにはフィルム以外に使うものが無いのか、お聞きしたいと思いまして。」
    「え、これフィルムカメラで撮ったの!?」
    「ええ。貴方から誕生日に貰ったもので撮りました。」
    「したら十分すぎるくらいだけど…」

     強いて言うなら、レンズにフィルターを付けてみるとか、光源の角度を調整するとか、あとは…。なんて、ぶつぶつ口に出しながら考える。いくつか頭の中で使えそうなフィルターをピックアップすると、メモ帳に書き出していく。そういうことなら、やれることはまだまだある。
     ふと目線をあげれば、ジェイドくんがちょっと意外そうな顔で僕を見ていた。視線だけで「なんだよ」と問えば、パッと表情を繕う。こういう時、彼は察しがいいから助かる。

    「随分熱心になってくださると思いまして。」
    「自分の家の商売道具なわけだし、最後まで責任持つよ。それに、僕も恋をしている人を見るのが大好きなんだよね。」

     思わず口角が上がる。きっと寮長が見たら、下品な顔で笑うなと怒られてしまいそうだ。けれど、仕方ないだろう。ここは男子校。他人の色恋なんてエンタメ、乗っからないわけにはいかない。性格が悪いと言うなら言えば良い。僕は楽しい、結ばれた二人は幸せ。Win-Winだ。なにより、僕はカメラを使うのと同じくらい、心が躍るような物語が大好きなんだ。
     そんな僕をみて、ジェイドくんもいつもの人を喰ったような顔で笑った。あんな甘ったるい顔、想い人にだけ見せてあげればいい。君の恋が実るように、精一杯手伝ってやろうじゃないか。

    「とりあえず、まずはこのフィルターを使ってみなよ。」

     いくつかリスト化したメモをジェイドくんに渡す。これからの予感に思わず口角が上がってしまったのは、ここだけの秘密だ。
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    さかもと

    REHABILIモブ一人称視点のジェイカリ(🌦️くん不在)
    以前週ドロで書かせていただいた話が楽しかったのと、🐬くんもなんだかんだ周りのモブとそこそこ仲良しだと嬉しいなという下心でやりました。
    楽しかったです!!!!!!!
    モブくんと🐬くんが話しているだけですが、根底にあるのは🐬🌦️です。
    【偏光フィルター】(モブ一人称のジェイカリ)

     僕には昔からの趣味がある。フィルムカメラだ。
     初めてカメラに触れたのは、確か12歳の頃。実家に持ち込まれた売り物にもならない代物をどうにか修理してもらい、フィルムも入れずにシャッターを押した。扱いが意外と難しいことを知って、ムキになり勉強したのが13歳の頃。親の手伝いでお小遣いを稼ぎ、様々な種類のレンズやフィルムを買いそろえたのが14歳のころ。とうとう自分でフィルムを現像することを覚えたのが15歳だ。
     そして、クラスメイトのジェイドくんに、誕生日プレゼントとしてカメラをあげたのが数か月前。なんとなく好きそうだから、と贈ってしまったが、今思えば余計なことだったかもしれないと不安になったのが二カ月前。完全に余計なお世話だったかも、と同じ寮の友人に愚痴をこぼしたのが一か月前。そして、聞きたいことがあると言って呼び出されたのが数日前だ。
     確かに僕は出席番号が近いから、クラスの中ではそれなりに話す方ではある。だが、ジェイドくんから僕へ言いたいことは、特に無いだろう。それとも、僕が気付かないだけで、何かあっただろうか。なんて、ここ最近の出来事 3853

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    楽しかったです!!!!!!!
    モブくんと🐬くんが話しているだけですが、根底にあるのは🐬🌦️です。
    【偏光フィルター】(モブ一人称のジェイカリ)

     僕には昔からの趣味がある。フィルムカメラだ。
     初めてカメラに触れたのは、確か12歳の頃。実家に持ち込まれた売り物にもならない代物をどうにか修理してもらい、フィルムも入れずにシャッターを押した。扱いが意外と難しいことを知って、ムキになり勉強したのが13歳の頃。親の手伝いでお小遣いを稼ぎ、様々な種類のレンズやフィルムを買いそろえたのが14歳のころ。とうとう自分でフィルムを現像することを覚えたのが15歳だ。
     そして、クラスメイトのジェイドくんに、誕生日プレゼントとしてカメラをあげたのが数か月前。なんとなく好きそうだから、と贈ってしまったが、今思えば余計なことだったかもしれないと不安になったのが二カ月前。完全に余計なお世話だったかも、と同じ寮の友人に愚痴をこぼしたのが一か月前。そして、聞きたいことがあると言って呼び出されたのが数日前だ。
     確かに僕は出席番号が近いから、クラスの中ではそれなりに話す方ではある。だが、ジェイドくんから僕へ言いたいことは、特に無いだろう。それとも、僕が気付かないだけで、何かあっただろうか。なんて、ここ最近の出来事 3853

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    楽しかったです!!!!!!!
    モブくんと🐬くんが話しているだけですが、根底にあるのは🐬🌦️です。
    【偏光フィルター】(モブ一人称のジェイカリ)

     僕には昔からの趣味がある。フィルムカメラだ。
     初めてカメラに触れたのは、確か12歳の頃。実家に持ち込まれた売り物にもならない代物をどうにか修理してもらい、フィルムも入れずにシャッターを押した。扱いが意外と難しいことを知って、ムキになり勉強したのが13歳の頃。親の手伝いでお小遣いを稼ぎ、様々な種類のレンズやフィルムを買いそろえたのが14歳のころ。とうとう自分でフィルムを現像することを覚えたのが15歳だ。
     そして、クラスメイトのジェイドくんに、誕生日プレゼントとしてカメラをあげたのが数か月前。なんとなく好きそうだから、と贈ってしまったが、今思えば余計なことだったかもしれないと不安になったのが二カ月前。完全に余計なお世話だったかも、と同じ寮の友人に愚痴をこぼしたのが一か月前。そして、聞きたいことがあると言って呼び出されたのが数日前だ。
     確かに僕は出席番号が近いから、クラスの中ではそれなりに話す方ではある。だが、ジェイドくんから僕へ言いたいことは、特に無いだろう。それとも、僕が気付かないだけで、何かあっただろうか。なんて、ここ最近の出来事 3853