ギルドの夜はかくして明くる。 煙と酒の香りが、ギルドの夜によく似合う。
新横浜『ハンターズギルド』は、煌びやかなネオンよりや喧騒よりも、狂人たちの活気に愛された酒場である。
午後6時の開店と共に、吸血鬼退治人たちが店のドアベルを鳴らし、濃紺が深まると共に一人また一人と集い始める。出自も、風貌も様々な彼らがこの店に集う理由は、この店こそが新横浜のハンター達を束ねる二人のギルドマスターが経営する彼らの拠点であるからこそ。
ギルドマスターは、二人の男だ。バーテンダーロナルドは、かつては赤い退治人と呼ばれた男。銀のリボルバーを操り、早撃ちで下級吸血鬼たちを灰に帰す姿には、昔から一部の熱狂的なファンがついていたが……。トレードマークだった赤いテンガロンハットを脱ぎ、緩く伸ばした銀の髪をハーフアップにした今の姿。整えられた顎髭と、本人曰く作家生活の無理が祟って使いはじめたという遠近両用メガネをかけた姿もまた、ダンディズムと共に枯れた魅力があると若い淑女たちから憧れの眼差しを受けるようになっていた。
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