IF birth of cinema
白雪の中に敷かれた線路の上を、黒い列車が走っていく。
売れないシンガーだった娘が、才能を見出されて華々しく咲いていく物語だった。寂しげな白のワンピースに始まり、ラストシーンでは鮮やかなオレンジのコートを着て。時間の経過と共に、主人公が自分に自信を持っていくのがよく分かる演出が素晴らしいと評判の映画だ。
この映画で有名なシーンと言えば、冒頭で古ぼけた衣装を着た少女が物憂げにプラットフォームに佇む場面だ。ブロードウェイに続く線路を見つめながら、目の前に留まる黒い列車をはらはらと涙を零して眺める姿は観客の心をぐっと掴んだ。
「私はいつか、あの列車に乗って夢の舞台に旅立つの」
その悲嘆に暮れた横顔が、どれほどの男たちを虜にしたことだろう。悪い客に飲まされたウィスキーで頬を赤くし、コートも忘れて寒い夜の中をさ迷いながらたどり着いた駅舎。
1968