「包帯」雑伊+数馬 もう水仕事をするには少し辛い季節になってきた。包帯を洗う手を止めて、冷え切ってかじかんでしまった指先に息を吹きかけた。
温かい呼気でぬくもる度に、じわじわと血が通う気配に指先がうずき出す。
人体の不思議に心奪われ、赤みを取り戻す指先をじっと見つめた。
「伊作先輩、残りは僕が洗ってしまいますから。どうかお部屋に戻ってください」
井戸端で伊作と並んで包帯を洗っていた数馬が顔を上げて伊作をとがめた。その後ろには小山のように積まれた包帯の束がある。
「なに言ってるんだい。数馬のほうが残りの量が多いじゃないか」
「でも――そんなに指先ばかり見ていると、風邪をひいてしまいます」
「そうならないように、早く終わらせて医務室でお茶でも飲もうよ」
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