見渡す限り水平線が続き、風も強くない昼下がり。いつもはキャプテン・クロの計画通りに船を走らせるために甲板を走り回っている船員たちも、今だけは船の手摺にもたれて脱力したり、酒樽に腰掛けたりと銘々に時間を潰していた。
馴染みの奴らとバカ話をするか、それとも船長のご機嫌を伺いに行くか……。
おれが迷っていると、先月入ってきたばかりの、口だけはよく回る冴えない船員がニコニコしながら声をかけてきた。
「ジャンゴさんて雰囲気うるさいですよね」
「知ったような口利くんじゃねえ!」
「じゃあ賑やかということで」
「よく分かってんじゃねえか」
それならいい、と大きく頷いておれは新入りに話の続きを促す。
「で、それがどうかしたか?」
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