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    greentea

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    SPRAKハンルス新刊サンプル

    HUG KISS LOVE 大切な存在が突然消えてしまうのを知っている。記憶の無いその体温は写真を通してしか分からず、別れを予感していても心の準備が出来ないまま遠く逝ってしまった存在を知っている。そして、怒りと悲しみと共にドアを閉ざして、遠ざけた存在を良く知っている。
     記憶の無い小さな頃から何度もあった別れはどれも辛くて、痛くて、涙も枯れていつの間にかどこかへ行ってしまった。そう思わなきゃ、前に進んでこれなかった。大切な思い出は痛みを思い出すから宝箱へと全部仕舞って、手元に残ったのは母さんが大切にしていた父親の遺したシャツと、何回もビデオで聞いた父親の得意だったピアノのメロディだけ。
     大切な存在はいつだって遠く手の届かない場所へと去って、痛みを残していく。やっと戻ってきても今まで通りとはいかずに、嬉しい気持ちと同時にふとした拍子に悲しみが忘れるなと言いたげに顔を出す。
     だからもう誰も、大切な人は傍に居なくていいと思ってた。作りたくないし、なりたくないと。でも、俺にずっと突っかかってきたむかつくあいつはどれだけ俺が嫌な顔をしても、無視をしても、拒否をしてもお構いなしと言わんばかりにテキストを送ってきて、マーヴに会いに来る俺の事をどこで知ったのか顔を出して、合同演習の度に声をかけてきた。
     お互いの基地は遠かったから主にテキストと、コールがセルフォンを震わせていた。フェニックスからもテキストが来てたけど、その内容は飲みの誘いからハングマンに気を付けろなんて内容から、ついにはどうにかしろとのお叱りも時々来るようになった。
     そうは言われてもと首を傾げながら、ハングマンからの誘いを躱していくうちに段々と具体的で誰からもわかるようなアプローチへと変わっていった。いつだって顔を合わせれば嫌味ばかりのハングマンが、どこをどうしたら俺へアプローチするまでに心変わりしたのか。
     そんな風に思っていたのに、どちらかが海上任務でテキストのやり取りがない期間、あいつはどうしてるかなとか、マーヴのところへ行くことになるとあいつからの連絡がきたりするのかもと気にしたり。気が付くとすっかりあいつの思惑通りになっていて、でも俺はもう大切な存在を作りたくなくて。あいつが本気で俺の事を好きなのかもって思い始めた心境の変化を認めたくなくて。
     そんな風に考えてからは変化が怖くてハングマンの事を遠ざけていたのに、俺が数年ぶりに風邪を引いて熱で朦朧としていた時、傍にいてくれたのはハングマンだった。
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