その手を離したくない 重力のように心が引っ張られて、一度キスをしてしまえば止まらなかった。答え合わせをしたいともう一度会って話すだけのつもりだったのに、体は正直なもので気がついたら何度も思い出していたあのリップにキスしていた。すり合わせたそこは柔らかくて、気持ちが良かった。
じかに肌に触れてペッティングもしていたのに、いざヘンリーから挿入を伴うセックスに誘われた時には動揺した。セックスは異性相手にはしても同性とは、あの記者ともそこまではしなかったからどっちがどうすればいいかまでは深く考えてなかった。
リードされるがままのセックスは気持ちが良くて、大変で、ヘンリーも気持ちが良いか気になって。僕が触れたヘンリーの肌はしっとりとしていて、そしてヘンリーの指が僕の身体に触れる度にびりびりと腰が痺れて。ゆったりと、そして必死にしたセックスは、ハートが満たされた。
アウティングされて、連絡も取れなくなったヘンリーの殻の内側の柔らかい場所が傷ついていないかずっと心配だった。やっと聞けた声に涙が出る程嬉しくて、でも心細そうに、震える声で僕に不安を告げたヘンリーの素直さと愛と僕を求める気持ちに胸が熱くなる。僕を遠ざけた彼の殻が、今の僕たちには無いのだと分かったから。
抱きしめた体は温度が保たれた部屋にいたとは思えない位に冷たくて、温める様に、彼を世界から守るように力を込めて腕を回した。その時の僕にはそれしか出来なかったけど、青ざめた肌のヘンリーがそれでも笑ってくれて僕は泣きそうになった。愛しくて、愛しくて。それだけなのに、僕たちはどうしてこんなにも傷ついているのだろう。
僕を、それ以上にヘンリーを縛って傷つける全てが辛かった。それでもヘンリーが一歩踏み出して、僕を彼の伝記の一部に当然のように出てこれるようにと心に思ってくれたから。何があってもヘンリーの隣に立ち続けてみせる。その時は、誰の前であってもヘンリーの手を離したくない。