お菓子 教室で今度するライブの打ち合わせをしていたレミ、麗亜、零一。いつもは麗亜の撮影の都合で中々三人で集まれない時があるが、今回は時間が合い三人でホワイトボードに書き込んだり意見を出し合ったりした。零一は話を聞きながらぐぅ、と腹から音が鳴ったのに気づく。その音が聞こえたのかレミがこちらを向いた。
「おや零一、お腹痛いのですか?」
「お腹すいたんでしょ」
「正解〜、ごめんちょっと食べるや」
麗亜は呆れるようにそう言っている横目で零一は鞄をガサゴソと漁り駄菓子を出した。いつものポテトチップスだろう思っていた二人は意外なものに思わず手に取った。
「あら、懐かしいわね? これ口の中でぱちぱちする綿菓子じゃない」
「ほぅ、これが駄菓子なのですね」
「そうそう、この前駄菓子屋見つけてさ。沢山買っちゃった」
零一はそう言いながら飴を一つ口の中に入れ舐める。飴を何個か見て麗亜をじっと見る零一、じっと見てきた零一に麗亜は何か顔に引っ付いているのか、とコンパクトミラーを取りだし見た。
「零一が見てくるからついてるかと思ったけど何もついてないじゃない」
「んー、麗亜って飴みたいだなぁって」
「飴?」
どういう事だろうかと思わず麗亜はレミを見た、レミは零一の本意を知るため隣に座りにこやかに笑って聞いてきた。
「飴とはどういう意味でしょう?」
「んー、ほら麗亜って綺麗とか言われてるの慣れてるでしょ」
「そうね、いつも言われてるし」
麗亜も椅子に座り直して零一の言葉をじっと聞く。零一はコロコロと飴を舐めつつ話を続ける。
「だからさ、麗亜の髪の色とか目の色、飴みたいだなぁって。飴みたいに甘くて綺麗なの、ほら飴細工ってあるじゃん。それ、見てるだけで甘そうでみんなをひきつけるんだよ、麗亜にぴったりでしょ? ふふん」
「零一らしい表現ですね」
「……なるほどね」
誇らしげに言う零一に、まさか飴で表現してくるとは思わなかったのだろう、お菓子が好きな零一らしい表現だが、と少しだけ拍子抜けをしてしまった麗亜を横めに小さくなった飴を噛んで飲み込む零一。そして零一は先程麗亜が手に取っていた綿菓子を掴みレミの前に差し出す。
「レミはね、綿菓子だよ。綿菓子は口の中ですぐ溶けちゃうけど、甘さはずっと残ってるの。それってすっごくレミらしいなって思って、みんなの心にレミは残ってるんだよ」
「おやおや、綿菓子ですか。ありがとうございます、なら私から」
レミはそう言うと机に置かれていた小さなチョコレートの包みをとって零一に渡した。
「君はチョコレート。あまくてコクが深い、香りもあって溶けてしまうのに離さない。零一ほどチョコレートの合う相手はいないでしょう」
「確かに、レミの言う通りね」
「やった、チョコレート大好きだからそれは嬉しいや」
そう言って零一はチョコを受け取り口の中に入れる。程よい甘さが口の中に広がり思わず笑う、零一のそんな様子に二人は顔を見合わせて笑った。
「零一の小腹も満たされたでしょう、話の続きしますか」
そう言ってレミはまたホワイトボードに意見を書き込んでいた、部屋の空気がお菓子の甘さに三人は包まれながら話し合いを続けた。