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    ちょこ

    主に企画参加の交流小説、絵など投稿してます
    よその子さん多め

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    ちょこ

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    エガキナ
    回想死因アフター
    琥珀と創の再会

    よその子様のお名前お借りしています

    おかえり、ただいま あれほどの壮絶と言っていい大型没【母なる金字塔】が討伐され、近辺の避難解除や細々とした没の残党狩りなどをしていたらあっという間に夕方も深くなり、もう夜になりそうな空が広がっていた。遠くの方で色んなツクリテやニジゲンから正気に戻そうとして奮闘し、無事戻ってきた巳神も、討伐を協力してくれた集も、先程まで一緒にいたリインやカナタは先に帰っていた。
    カナタは本当に一人で帰るのか、と琥珀を心配していたが、琥珀はその気持ちだけ受け取った。
    あれほどツクリテというツクリテを誘い込んでいた海は静かに波打つ。琥珀はコインロッカーから取ってきたコートを羽織り一人座り込んで考えていた、海は夜空と夕焼けが混ざったような色を映し出し、平和な海だった。
    幻覚だったとはいえ、親友を見てしまった琥珀は、全て終わってから考え込んでしまった。親友──創は本当に生きているのか、創を治療しているというニジゲン──CQ×2から生きているとは言われていた。けれど、詳細を教えてくれなかった。決してそのニジゲンを疑った訳では無い。だが、琥珀は目を伏せる。
    波の音だけが琥珀の耳に入る、ここに居てもなにもならない。琥珀はそろそろ帰ろうと立ち上がった。そして海をじっと見ている時、波以外に琥珀の耳にある声が聞こえた。その声は聞き覚えがあった、いや、聞きたくて仕方なかった声でもある。その声は幻覚を見た時でさえ聞こえなかったというのに、何度も、何度も自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。
    「琥珀! 琥珀!」
    「……え……」
    もう没は討伐されている、幻覚かと一瞬思ったが、それよりも驚きと、戸惑い、そして胸から込み上げてくるなにかが琥珀を占めていた。琥珀の名前を呼ぶ相手、金髪に、新緑のような緑の目。その特徴に一致する相手は一人しかいなかった。違うところがあるとするなら、背中まで伸ばしていた髪が短く襟足辺りまでになっていることだけだった。

    ──琥珀が三年間、ずっと探していた相手。あの日一人にさせてしまった大事な親友、江波戸創だった。

    創はこちらに向かって必死に走っていた、その光景が滲んで見える。琥珀は泣いていた、勝手に涙が溢れて止まらず琥珀の頬を伝う。琥珀は釣られて走り出した。あぁ、これは夢でも、ましてや幻覚でもない。本当の事で、琥珀がずっとずっと、願ってたことだ。
    「創……! つく、る……!」
    「琥珀!」
    創との距離が近くなる、琥珀は泣きつつも、創を見つけた時にしなければいけない事を思い出し、突然止まったかと思えば近寄ってきた創の顔面を殴った。
    「えっ……! なんで!?」
    突然殴られた創は意味がわからない、と言った様子で琥珀を見る。創からしたら泣きつつも笑ってくれる琥珀だと想像しただろう、けれど琥珀は泣きながら創の胸を叩く。
    「お前ずっと何してたんだ!? あんな、あんな事しておいて! 俺がずっとどんな気持ちで、お前を探してたか分かってるか!?」
    「こは、琥珀、いたっ、痛いから」
    「……何度も」
    叩く力が弱くなり、創が琥珀を見ると、琥珀は震えながら創の胸に顔を埋めると、消えそうな声で言う。
    「……本当は、何度も、何度もお前を探すのを辞めたい日が何度もあった。……一ヶ月、半年、一年……時間だけがすぎて、お前の手がかりはひとつも出てこない。……心無いことを言われたこともある。お前はもう死んだ、探すなんて無駄だって」
    「……」
    創は何も言えずに黙ってしまった、自分が記憶喪失になっていた三年間、琥珀は色んなことを言われながらも自分を探してくれたのか、と。先程の楽観的に考えていた自分を殴りたくなったとき、琥珀は話を続けた。
    「けど、けど……お前が生きてるって信じてくれる人もいた。……俺がお前が生きてるって言った時、初めに信じてくれた人、カナタさんにリイン……敵派閥だけど、信じて探してくれる人もいた。俺は、その人たちに救われた。……救われたんだ。俺は、ずっと、この三年間、お前に会いたくて。会いたくて……」
    「……」
    「……だから、だから……。俺は、創に会えて……嬉しい……凄く嬉しい……! 生きててよかった……! お前が生きてるって、信じてよかった……!」
    「……琥珀」
    創の目にはいつの間にか涙が浮かんでいた、琥珀と同じようにポロポロと涙を流していた。自分が生きてる事を信じてくれた琥珀に、嬉しくて、胸が締め付けられる感覚になっていた。
    「……あのさ、俺。あの没倒した後、三年間記憶喪失になってて」
    「えっ……」
    「だから、お前にずっと連絡できなかったし、思い出したのも実は今日。そのきっかけはお前の本だったよ。お前の本で、思い出せた。それと同時に、お前が無事だって聞いて凄くほっとした。親友を守れて良かったって、思った」
    「……」
    確かに創を治療しているCQ×2は創は生きていると教えてくれた時、今創に会う状態ではないと言っていた。まさか記憶喪失になってるなんて琥珀は考えたことすらなかった、そして、自分の本がきっかけで思い出した事に、どこか嬉しく、胸が暖かくなった気がした。創は泣きつつも琥珀が羽織っていたコートを触った。
    「このコート、ちゃんとあったんだな。あの日重くて、お前を連れて行ってもらった後に脱いだんだよ」
    「俺はこれを病室で受け取ったけどな。……あの日からだよ、お前を絶対に見つけ出すって、決意したのは。……お前のコートだから返さないと……」
    そういって琥珀が脱ごうとした時、その動きを止めた創。琥珀がなんだろうかと怪訝な顔をすると、創は笑いつつ琥珀に言った。
    「それ、お前がずっと着てくれよ。お前似合ってるし」
    「……いいのか?」
    「あぁ、琥珀に着ててほしい」
    それにしても夏にもかかわらず分厚い冬用のコートを羽織っている琥珀に笑ったが、琥珀なりのけじめだったのだろうと創は何も言わなかった。
    いつの間にか夕焼けは沈み、薄らと夜空が見えていた。星はまだ出ていなかったが、琥珀からしたら目の前に一等星のように、キラキラとした金髪を揺らす創が眩しくて目を細めた。そんな琥珀に創は笑って一言言った。
    「ただいま、琥珀」
    創の言葉に、琥珀は笑って涙を拭いて答える。
    「おかえり、創」
    夜空に浮かんだ星がキラリ、と光った。小さな星だったが、まるで会えた自分らに対して光ってくれたような気がした。
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    ちょこ

    DONEダミアさんお誕生日小説
    ダミアさんお借りしました!お誕生日おめでとうございます!
    モンブラン「ダミア、お誕生日おめでとうございます」
    「おー! ありがとな!」
     レイフが借りている拠点と言っていい住まいにダミアを呼び、目の前にケーキを出す。ダミアと前もって連絡を取っていたため、こうして呼べたのだ。ケーキはレイフの手作りだ。本当なら、料理も出そうかと言ったのだが、間髪入れずに断られてしまった。今度こそ上手く作れるような気がしたのにな、とレイフは残念そうに思いながらも、ダミアを見た。
    「このケーキ……モンブランか?」
    「そうです、アマロンを使ってます」
    「へー! 王様って呼ばれてるやつじゃん!」
     ダミアは感心したようにケーキを眺めた。アマロン、様々な栗の中で特段に甘い栗の事だ。身も大きいのだが、育てるのが難しく、しかも、大きく育てようと魔力を使うと、すぐに枯れるという性質を持っていた。なので、完全な手作業、時間をかけてゆっくりと育てる。そのため、栗の中の王様、という意味で【アマロン】と呼ばれるのだ。一粒だけでも驚くほどの高額で取引される。その高額さに、一時期偽物のアマロンが出回るほどだった。偽物のアマロンと区別を測るための道具すら開発されるほどに。
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