ほんの少しだけ、おやすみ 昼下がり、鈴鹿の部屋の窓から暖かな日差しが優しく入りこんでいた。今日は朝から晴れる、と天気予報で言っており、それに比例するかのように気温も上がっていた。鈴鹿の部屋で、窓から覗く風景をぼんやりと見る琥珀。
陽の光が当たっているからか、琥珀の赤目は綺麗に、まるで宝石のように見えた。整った顔立ちからか、横顔だけでも絵になる。今日は鈴鹿の所に泊まるつもりだったため、もう少ししたら買い物に行こうか、何を作ろうかな、と考えているとそっと、後ろから抱きしめられる感覚がした。
「……鈴鹿?」
その相手は鈴鹿しかいない、琥珀が後ろをむくと鈴鹿が後ろから抱きしめていた。顔を見てすぐに分かった、眠たそうな顔をして琥珀にすりよるように抱きしめていたからだ。琥珀は優しく鈴鹿の頭を撫でる。
「鈴鹿? 眠いなら横になった方が……」
悲しい事に琥珀では鈴鹿を運ぶのはやっと……いや出来るか不明なのだ。ここで寝てしまう前にベッドで寝て欲しいと思い、琥珀は優しく鈴鹿を起こす。琥珀の声にうつら、うつらとしていた目をなんとか開ける鈴鹿。そっと琥珀から離れてベッドに移動し、横になったかと思うと、ポンポン、と琥珀をみて空いているスペースを叩く鈴鹿。
「……寝るんじゃないのか?」
「……ん」
琥珀の声にぼんやりと見てくる鈴鹿。もしかして来いと言っているのだろうか、と琥珀はそのまま鈴鹿の隣に横になる。琥珀が隣に来た時、鈴鹿は琥珀を抱きしめた。抱きしめて、すぅ、と静かに寝息を立てて寝る鈴鹿。鈴鹿の胸元にすっぽりと包まれている琥珀は、少し笑って顔をゆっくりあげて、鈴鹿に触れるだけの口付けをする。買い物は起きた後に行けばいいか、と。
「……おやすみ」
琥珀はそっと鈴鹿の胸元に耳を当てた。トク、トク、と心臓の音が聞こえる。そしてそっと目を閉じだ。好きな相手の匂い、体温、心地の良い音。それらに包まれているからか、とても安心するのだ。琥珀はそのまま、鈴鹿と同じように寝息を立てて寝た。