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    ちょこ

    主に企画参加の交流小説、絵など投稿してます
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    エガキナ

    よその子さんお借りしてます

    ##エガキナ
    ##認可信号組

    青い空 夏、外に一歩出れば一瞬にして汗が吹き出すほどのムッとした空気に少しだけ顔をしかめる。そう、暑い。暑いのは当たり前だ、夏なのだから。コンクリートからの照り返しもあり、ますます暑い。創は顔を顰めつつ、街の繁華街の日陰にて鈴鹿と共に立っていた。
     今日は鈴鹿ともう一人、自分の親友である琥珀と一緒に隣町まで出かける約束をしていたのだが、生憎琥珀の方が遅れると連絡があったのが約束十分前。すぐに終わるからと返信が来たため、少し外で待つか? と話になって十分後、その選択肢が間違いだったことに額に滲んだ汗を拭いながら、隣にいる鈴鹿を見た。

    「クソっ! あっちぃんだよ!」
    「ガラ悪ぅ……」
     隣にいた鈴鹿は、誰が見ても苛立ってるのが分かるほどに眉をシワがつきそうなほどに顰め、舌打ちでもしそうな程だった。
     創は知っている。鈴鹿は琥珀の前では絶対に、今のような言葉を使わないと。何年一緒にいると思っているのか、一度聞いた時、琥珀の前では大人ぶりたいから、とそっぽを向いて答えた。
     確かに、好きな人の前ではカッコつけたいし、大人ぶりたい。鈴鹿の気持ちはよく分かった。出会った頃の鈴鹿の態度と、現在の自分や琥珀に対する態度を考えてしまうと、変わりように思わず笑ったものだ。それはいい変化、として創は嬉しく思った。
     それにしても、暑いのは全体の服装が黒っぽいからだろ、と言いそうになったが黙った。それよりも、鈴鹿が猫背なのが気になってしまう。創は優しく鈴鹿の背中をさする。
    「鈴鹿、猫背」
    「あ? 別にいいだろ……お前の格好も暑苦しい」
     そう言って首を指さす鈴鹿。創の格好は、夏にも関わらず薄手のトータルネックのような、首元を隠せれる服だった。確かに暑いが、仕方の無いことだ。自分だって、普通に薄着になりたい。けれど、こうしないと胸元にある傷が見えてしまいそうなのだ。
     鈴鹿は知っているが、創の胸には傷があった。その傷は、三年前自分がとある没を一人で無茶をして討伐したさいについてしまった傷だ。その出来事のせいで、自分は三年間記憶を失い、琥珀と鈴鹿には謝りきれないほどの心配も、苦労もかけた。
     自分を助けてくれたとあるニジゲンから、傷は消せると言ってくれたのだが、返事を有耶無耶にして今に至る。創自身、この傷を消していいのか迷っていた。これを消してしまったら、あのニジゲンと過ごした三年間も消えてしまいそうだったから。
     創は黙った後、ため息を吐く。これ以上傷に関して考えるのはよそう。ちらりと鈴鹿を見る。ちゃんと立っていれば自分と身長は同じだというのに、猫背のせいでだらしなく見える。姿勢がこれ以上悪くなるのはいけないことだ。
     こういう時、鈴鹿が言うことを聞く魔法の言葉を知っていた。創はどこか意地悪そうに笑って、鈴鹿に言う。

    「それ、琥珀の前でも同じこと言える?」
    「……。……あー……」
     創の言葉に数秒、反応が遅れた鈴鹿は、呻き声をあげつつ姿勢を正した。やはり、琥珀の名前を出せばいいな、なんて思っているのと同時に、暑さもあるだろうが、やたら鈴鹿が苛立ってるようにも見える。
    「どしたの、なんか機嫌悪いけど。暑さと別モン?」
    「……この前の締切、一週間くらい勝手に縮められたから、クソがって思って」
    「あー、それ苛立つやつ」
    「それに文句言ったら、挙句の果てにこっちのせいにされそうになって、ふざけてんのか? って思わず口に出た」
    「なるほどね〜」
     相当苛立ったのだろう、鈴鹿の口から出る言葉はどれも言葉遣いが強く、はっきり言って口が悪い。高校の時からだったと記憶してるが、創の前では素が出てるのか不明なのだが、話しやすいからかこうして琥珀の前と話す時の口調より、少し口が悪いのだ。それも琥珀は知らないし、琥珀は態度変えないからよくね? と言ったことがあるのだが、帰ってきた言葉は先程のと同じ、大人ぶりたいから、との返答だった。
     まぁ、それはいい。鈴鹿だって鬱憤が溜まってこうして話すのは。けれど、鈴鹿は気づいてないが、丁度愚痴を言った時に琥珀がやってきたのだ。

     琥珀もだ、三年前と比べると、服装が変わっていた。まるで三年前の自分のような格好をして。鈴鹿から聞いたが、自分が見つかる三年間、琥珀はずっと、自分のコートを羽織っていたと。今日のような暑い日差しが刺さるような夏でも、寒さの厳しい冬でも。創を見つけたいから、と強い意志の現れだったのだろう。自分が見つかった今では、コートを羽織らなくなっていた。
     こんな暑い時に、冬用の分厚いあのコートを羽織るのを辞めたのは良かったのだが、今度は薄着になったからか、琥珀の細身が目立っていた。琥珀は男からでも声をかけられる。それなのに、琥珀は警戒心があまりないからか、そういった誘いだとイマイチ分かってなかった。
     自分もそうだが、鈴鹿だって嫌だろう。今日、いい機会なので何か薄手で羽織れるものでも選ぶか? なんて思いながら琥珀の顔を見る。
     声をかけようとした琥珀に対して、創は鈴鹿にバレないようにジェスチャーをして『今は話しかけない』としたのだ。琥珀は首を傾げつつ、素直に今も黙って鈴鹿の後ろで話を聞いている。
     笑いそうになっている創に気づいたのか、鈴鹿は訝しげに顔を見る。
    「あ? 何笑ってんだ?」
    「……鈴鹿くん、後ろ、後ろ」
    「あ? 後ろ……? …………」
    「…………あ、えと、遅れた……?」
    「…………」

     少しだけど時が止まったかと思ったら、ゆっくりと自分の方へ顔を向ける鈴鹿。その表情に思わず笑いそうになったが何とか堪えていると、鈴鹿が恐る恐る口を開いた。
    「いつからいた、あいつ」
    「んー? いつからだろうなぁ?」
    「あー……締切辺りから、だな」
    「まじか……」
     蚊の鳴くような声を出した鈴鹿に対し、恐る恐ると琥珀が答えたかと思うと、鈴鹿は頭を抱え出した。そして琥珀に何か謝りながら言い訳をするが、その言い訳も言葉が消えていき、もうどうにでもなれ、と言った様子だった。すると、黙っていた琥珀は、そっと鈴鹿の頬を触る。
    「謝らなくてもいいんだからな? それよりも締切がそんな短くなってたんなら無理する気持ちは分かる。大丈夫か? 体調は? ちゃんと睡眠やご飯食べたか?」
    「え、あ、大丈夫……。でも琥珀の飯……食いたい……」
    「いいよ、なら今日お邪魔するから。買い出しもしような」
    「……うん」
     どこか顔を赤くして答える鈴鹿の顔を、こっそりスマートフォンで撮ろうとする創。目の前の親友二人が仲睦まじそうで安心するのだ。そしてシャッターのボタンを押そうとした時、鈴鹿が思いっきり創の足を踏んだ。
    「いったーい!」
    「何撮ろうとしてるんだお前」
    「えー、だって幸せそうですしお二人さん」
    「そもそも、創が声をかけるな、なんてジェスチャーするから……」
    「……あ?」
    「あ、やべ」
     お前のせいか、と言わんばかりの鈴鹿の表情に、笑いつつ創は道を走る。そんな創の後を追いかける鈴鹿と、そんな二人の様子を見て笑う琥珀。
     夏の綺麗な真っ青な青空が三人を見下ろした。
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