二人の甘え方 昼下がり、琥珀は恋人である鈴鹿の家に遊びに来ていた。琥珀も鈴鹿も、お互いの締切が落ち着いたこともあり、どこかに出かけるよりか、家でゆっくりしようと昨日話していたのだ。因みに、今日は鈴鹿の家に泊まるつもりのため、心のどこかで緊張していた。
作り置きを作った後、琥珀は鈴鹿の隣に座る。その時、鈴鹿がぽんぽん、と自分の太ももを少し叩いていた。なんの事か、と琥珀が眺めていると、鈴鹿が口を開く。
「琥珀、こっち」
どうやらここに来て欲しい、との意味だったらしい。琥珀はそこに座るのか? と思ってしまったが、恐る恐る鈴鹿の足の間に座った。その時、後ろから抱きしめられてしまう。
「鈴鹿……?」
少し心臓が跳ねたように、心臓の音がうるさい。顔が赤くなってないか、と思いつつ鈴鹿に声をかけるが、鈴鹿は何も言わずに琥珀の首元に顔を埋めて、抱きしめていた。
鈴鹿の行動が最初分からなかったが、もしかしたら甘えたいのだろうか、と琥珀は思った。鈴鹿らしい甘え方かもしれない、なんて思って少し笑う。鈴鹿が甘えているのなら、自分も甘えていいだろうか。
「……鈴鹿、向き合っていいか? 鈴鹿の顔が見たい」
「……ん」
鈴鹿がコクリ、と頷いたのと抱きしめていた手の力が緩んだため、琥珀は難なく鈴鹿と向き合うように座れた。琥珀は鈴鹿に向き合うと、そっと唇を重ねる。突然キスされたからか、少し目を見開く鈴鹿。
「……」
当の琥珀はした後に恥ずかしかったからか、すぐ唇を離して手で隠していた。すると、鈴鹿がその手を掴んで唇から離したかと思うと、すぐにキスをした。先程の琥珀のような軽いものではなく、ぬるり、と舌を入れて。
「んっ……」
キスをしながら背中を撫でる鈴鹿に、抵抗することなく受け入れ、恐る恐る自分も舌を絡めた。そしてそっと、鈴鹿は唇を離した。透明な糸が引き、すぐに消えた。
琥珀は少し息を乱れつつ、ぼぅ、とする頭で鈴鹿の顔を見る。そんな琥珀の頬を優しく触り、微笑む鈴鹿。優しく触られただけで、体が反応してしまう。そして、琥珀の耳元で囁いた。
「……もう一回、いいか?」
「あっ……。……」
琥珀は少し黙った後、鈴鹿に不意打ちするかのように頬にキスをした。
「……いいよ」
そう言って笑ったのと同時に、琥珀は鈴鹿の手を握った。