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    ちょこ

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    エガキナ
    よその子さんお借りしてます

    ##エガキナ

     とあるカフェの一室、カフェなのだが、個室も用意されており、そこにやって来たのは琥珀と、琥珀がずっと探していて、やっと見つかった親友の創だった。創は、三年間行方不明になっていたのだが、あの海の騒動のあと見つかり、その後の後処理が大変だったが、やっと平穏な日々を取り戻そうとしていた。そして、琥珀と同じように、自分が生きていると信じてくれたツクリテやニジゲンにお礼参りがしたい、と言い出したのがつい先月のこと。本当に有言実行をして、ツクリテとしての仕事の合間に、色んな人やニジゲンにお礼を言いに回っていた。
     なぜカフェに来たのか、そしてなぜわざわざ個室を選んだのか、二人が会う予定の人物が無免連だったからだ。認可と無免連、普通なら敵対関係であり、関わるなどないはずなのだが、琥珀が相手に非常にお世話になっているのと、その相手が創の生存を否定しなかったのだ。ポロリ、と話したのは琥珀なのだが、それも相まって、創が知る事となり、会いたいと言ったのだ。
     個室を覗くと、その相手である巳神はもう来ており、変装をしているからか、パッと見では巳神だと分からない人が多いだろう。
    「巳神先生、すみません遅れました」
    「そうですよ、待ちましたからね」
    「あんたが巳神……さん? 俺、江波戸創! 琥珀の親友してまーす!」
    「貴方が親友さんですかぁ」
     巳神はニコニコと笑って創を見る。どことなく、その目を疑ってしまう琥珀はそそくさと椅子に座る。創も琥珀の隣に座り、巳神に話しかけた。
    「無免連なのに俺の生存信じてくれたんだろー! 俺超うれしー! 会えて嬉しいぜ! 巳神さん!」
    「そうですかそうですか、俺も会えて嬉しいですよ」
     ニコニコと、まだ巳神になんの疑いも持っていない創はそう言ってペラペラと話をする。そんな創の話に相槌を打つ巳神を見ながら、琥珀が口を開く。
    「創、本当に巳神先生に会いたがってたので……」
    「だってー、一人でも信じてくれたんだろ。琥珀がずっと信じたことを、巳神さんは信じたんだろ? それって嬉しいじゃん」
    「まぁ、そうだけど……」
     そう、確かに嬉しかった。否定的な意見を言われてきた琥珀にとっては、少しでも創の生存を信じてくれた相手というのは、どれほど心の救いになったことか。
     ふと、琥珀が巳神の顔を見ると、ほんの少しだけ目を伏せてるような気がした。琥珀は巳神の口から聞いたのだが、巳神は親友を喪ったと。もしかして、嫌な事を思い出させてしまっただろうか、と琥珀は少し考えて口を開いた。
    「……友達になりますか」
    「琥珀?」
    「おや? 面白い提案ですね?」
     ニコリ、と笑う巳神と、突然言い出した琥珀に怪訝な顔をする創。創からしたら、え、友達じゃなかったの? と思わず口に出しそうになったがそのまま黙った。
    「別に……提案に乗るかは巳神先生次第ですけど」
    「無免連と友達は創務と他の認可にバレたらヤベーけどな! けど秘密の友達みたいでいいな、俺も乗る!」
    「良いですね、秘密の友達ですか、面白い」
     コーヒーを一口飲んで嬉しそうに言う巳神をみて、琥珀は微笑む。少し元気になったように見えたからだ。
    「巳神先生も先程のような顔をしなくていいでしょう」
     思わず言ってしまったが、巳神の動きが少し止まったように見えた。
    「貴方きっと早死するタイプですね。俺はつけ上がりますよ」
    「早死なんてしなければいい話です」
    「死にかけた俺何も言えねーな!」
    「創……」
     創の一言に呆れつつ、琥珀は巳神を見る。巳神からは相当な事をされ続けたが、なんだかんだ許してしまうのだ。確かに、この態度は巳神をつけ上がらせることになるだろう。
    「何かあっても俺が手術をして生かせます」
    「……俺が望んでなくても?」
     琥珀の言葉に首を振る巳神。
    「俺が望んでるので関係ないです。生きてれば必ず何か感情は変わります。……まぁ、俺はきっとまだ囚われたままですね」
     琥珀は巳神のその言葉に何も言い返せなかった。この人なら、本気で自分が死にかけたような場面に陥っても、何がなんでも諦めたくなくて、生かせる選択肢を選ぶのだろうな、と。
    「……そうですか、巳神先生も変われたらいいですね」
    「友人として協力して頂けたら、変わるかもしれませんね」
    「……友人に協力してとか、そんなこと言わなくていいんですよ」
    「そうそう! よく分からねーけど、何かあったら協力するからさ!」
     何か事情がある事を察した創なのか、そういってニカッ、と笑う。琥珀は、創のそういった一面も眩しいなと思う時があった。
    「お人好しだから、いいように使われてしまうんですよ」
    「それで誰かが変われるなら、お人好しだろうがいいんですよ」
     そういって琥珀は創を見た。創はなんだ? と首を傾げていたが、琥珀は創が隣にいてくれたからこそ、救われたのだ。きっと創は無自覚なのだろう、それが創らしいといえばらしいのだ。
    「……すみません、少しお手洗いに行きます」
     そう言って琥珀は個室を出た。琥珀が出ていった後、巳神が創に向けて口を開く。
    「……もう居なくならないでくださいね。残された方の気持ちは、貴方が想像するよりも、不安で辛いので」
    「……うん、琥珀から相当怒られたし、泣かせちゃったし……。けどもう、琥珀泣かせないから。もう居なくならないよ、俺は」
    「……そうですか、それならいいんですよ」
     巳神の言葉を聞きながら、やはり何かあったのだろうか、と巳神を見る。まだ知り合ったばかりで根掘り葉掘り聞く訳にもいかない。いずれ話してくれるその時まで待つか、と思った時、巳神がどこか嬉しそうに創を見て言う。
    「ところで、貴方はどこか体悪かったりします?」
    「え? うーん、この前、創務に事情聴取された時に健康診断受けたけどさ、特に異常は無かったな?」
    「……へぇ、健康体って事ですかぁ」
     どこか巳神のメガネが怪しく光ったように見えたが、なんだろうかと首を傾げる創であった。
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