冬来たりなば アシャ・ネビィが領主として治める虹の谷に、初めての雪とともに、馬車に乗ったおばあさまがやってきた。
「手紙でも伝えたけれど、改めて。領主就任おめでとう。あなたのこの先を嬉しく思うわ」
「ありがとうございます、ですがそのためにこちらに?」
「それもあるけれど、御領地をいただいてしまったじゃない?
そうなると跡継ぎが必要でしょう。
そう思って、いろいろ持ってきたのよ」
かくしておばあさまの馬車から出てきた"いろいろ"とは、大量の釣り書きであった。
アシャは滴り落ちる汗を拭って今一度それを見たが、どんなにまばたきしても消えてはくれなかった。
「春になったら都に戻るから、それまでに選んでちょうだいね」
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