【かねあい】かねいが初夜を迎えるまでの話(1作目)ぷっくりとした唇の弾力を味わうように食み、ちゅ、と小さなリップ音を響かせる。
軽く口付けて、離して。
角度を変え、味わうように数度唇を寄せると、その度に可愛らしい音が鳴る。
ちゅ、ちゅ、と響く音がなんだか普段の――顔を合わせれば大なり小なりの言い合いが起こる――自分達の様子からは遠いそれのように思えて、なんとも言えないくすぐったさが胸を過る。
それは金城に組み敷かれ、背中をベッドのシーツに預けた愛染も同じだったようで、触れ合わせた唇からふ、と短い吐息が零れ落ちる。
薄く目を開けば、可笑しそうに細められた空色の瞳と視線が絡み合って、金城の唇がちっ、とひとつ、舌打ちを落とす。
シーツについた金城の両腕の中に囲われているくせに、余裕あり気に微笑みながらキスを享受する男からその余裕を剥ぎ取ってやりたくて、金城の指が愛染の耳に触れる。
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