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    huya38628

    昭和生まれ/物書き/刀剣乱舞,twst ※転載・まとめサイト・メディアへの利用は有償にて承っております。Don't use my works without my permission.

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    huya38628

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    「沈め、マリス・ステラ」の後日談なんだけど、続編に入れられるかどうか微妙になってきた部分です。ふりかけたパセリみたいなフロリド・トレジェイ要素有り

    「お味はいかがでしたか」

    空のカップを下げていくジェイドが、ぐりんと上半身を傾けて、書類に向かう僕の顔を覗き込んだ。
    珍しい無作法に思わず眉根を寄せてしまったが、普段と何も変わったところはない。
    VIPルーム、土曜日のイレブンジズに、温めたミルクとアッサムと、オーガニックのアガペシロップ。
    ミルクは実家の契約農家のものを分けてもらっているし、アッサムは今年のオークションで僕が仕入れを決めた茶葉だ。
    茶葉の形が良くないため等級が落ちるが、抽出した水色も香りも一級品とほぼ見分けがつかないものを大量に買い占めた。
    いつもの素材、いつもの香り、慣れ親しんだ自分好みの味。

    「…いつも通り、美味しかったです」
    「お茶ではなく、先週末のエキゾチックなパンケーキですよ。召し上がらなかったんですか?」
    「ああ…」

    そっちか…。というか、何も言ってこないだけで、やっぱりバレていたか。
    ジェイドはまっすぐの姿勢に直って、ニヤと口角を吊り上げた。慇懃なくせに、どうにもいやらしい。

    「ええ、おかわりまでお腹いっぱい食べましたよ。美味しかったです、本当に」
    「おや、貴方が珍しい。そんなに良かったんですねぇ、フフフ」
    「そのパンケーキですが、次のセカンドフラッシュに合わせて、季節限定デザートとしてラウンジで出すことにします」
    「えっ?」
    「ホイップに向いたバターと、そうですね…どっしりした味わいの蜂蜜が欲しいです。春にまたフロイドの意見も聞いて決めたいと思いますが、そのつもりでいてください」
    「…はい、分かりました」
    「ああ、それと」

    興をそがれたジェイドが向けた背中に、もう一声かけてやる。
    ゆっくりと振り返った彼は、もう見慣れた澄まし顔を貼り付けていた。

    「何でしょう」
    「お前とフロイドが度々自費で購入している、一等小麦と業務用バターと冷凍イチゴですが。そろそろ、仕入れに加えて下代で出しましょう」
    「はい」
    「女王陛下にもなかなか好評のようです。いざとなったら売れる恩としては格安ですね」
    「ありがとうございます、慈悲深いアズール」

    慇懃な秘書は、そつのないお辞儀をして部屋を出ていく。
    自分で木材から選んだお気に入りの扉が、今日はやたらと憎たらしかった。あの扉ごと、二つ折りにしてやりたい。
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    huya38628

    MOURNING「沈め、マリス・ステラ」の後日談なんだけど、続編に入れられるかどうか微妙になってきた部分です。ふりかけたパセリみたいなフロリド・トレジェイ要素有り「お味はいかがでしたか」

    空のカップを下げていくジェイドが、ぐりんと上半身を傾けて、書類に向かう僕の顔を覗き込んだ。
    珍しい無作法に思わず眉根を寄せてしまったが、普段と何も変わったところはない。
    VIPルーム、土曜日のイレブンジズに、温めたミルクとアッサムと、オーガニックのアガペシロップ。
    ミルクは実家の契約農家のものを分けてもらっているし、アッサムは今年のオークションで僕が仕入れを決めた茶葉だ。
    茶葉の形が良くないため等級が落ちるが、抽出した水色も香りも一級品とほぼ見分けがつかないものを大量に買い占めた。
    いつもの素材、いつもの香り、慣れ親しんだ自分好みの味。

    「…いつも通り、美味しかったです」
    「お茶ではなく、先週末のエキゾチックなパンケーキですよ。召し上がらなかったんですか?」
    「ああ…」

    そっちか…。というか、何も言ってこないだけで、やっぱりバレていたか。
    ジェイドはまっすぐの姿勢に直って、ニヤと口角を吊り上げた。慇懃なくせに、どうにもいやらしい。

    「ええ、おかわりまでお腹いっぱい食べましたよ。美味しかったです、本当に」
    「おや、貴方が珍しい。そんなに良かったんですねぇ 953

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