拙宅トリースカ組の考察的なあれそれ虫魂トリースカ組。
虫たちの社会では名前を知らない者はいないマフィアであり、あらゆる闇社会で特製の密造酒を売り捌いて金儲けを働いている。
小さな体ではあるが、達者な弁舌と計算高い頭脳で巧みに密造酒を売り飛ばす、ボスのアナウンサースネイル。
強面と悪賢さ、そして恐喝と暴力でいくつもの商談を(強引に)成立させる、組員のリーダー的存在のスパイダー。
その美貌と妖艶な踊り、他人の懐へ潜り込む愛嬌でハニートラップを仕掛け、客を騙しに騙す踊り子スパイ、ライトバグ。
部下にイモムシやたくさんのハエを従える彼らは、常にアリ警官たちと抗争を繰り広げており、その勝負は長年こう着状態だった。
カタツムリという種族ゆえ、体も小さく、足も遅く、戦闘力も皆無だったゆえに他の種族からいじめられていた幼き日のスネイルは、それゆえに知力と弁舌を武器として身につけた。そして、金になる密造酒に手を出すことで富と権力を得た。このビジネスに魅力を感じたはぐれヤクザのスパイダーや、ストリッパーくずれのライトバグといった同志が集まり、トリースカ組というマフィアを立ち上げることもできた。
決して褒められた道ではないが、今のスネイルは確かに楽しい人生を送っていた。集まったならず者たちも、何だかんだ互いを信頼するくらいには純な部分を持っていたゆえ、組織は裏社会で安定の地位を築いていた。
ある時、スネイルはアジトの近くで捨て子を見つけた。何の種族かは分からなかったが、とにかく虫族ではないようだ。腹を空かせて痩せ細った小さな体は泥と埃に塗れており、瞳に生気は無く、受け答えもしない。今にも死んでしまいそうだった。
普段であれば、そんな子供など歯牙にも掛けないはずだ。しかし、スネイルはその子供に惨めな過去の自分を重ねてしまった。あの頃の自分を、救ってくれる人は誰もいなかった。あの頃の自分が本当にしてほしかったことを思った時、スネイルは子供を拾い上げ、アジトで手厚く介抱した。
やがて子供はみるみる元気になり、スネイルに懐いた。聞けば、彼は別のマフィアと警察の抗争に巻き込まれ、そこで両親を失い孤児となったことで行き倒れてしまったらしい。
子供は、スネイルたちが虫族のマフィアと知った上で「自分をここに置いてほしい」と頼み込んだ。
自分はもう行く宛も頼れるツテも無い。自分から何もかもを奪った原因のマフィアや、自分を助けてくれなかった警察に復讐がしたい。自分を救ってくれたスネイルたちに恩返しがしたい。それが子供の言い分だった。
流石に子供に犯罪の片棒を担がせるのは気が引けたスネイルたち。しかし子供は一生懸命に頼み込んでくるため、その気持ちを見込んで彼を一味に引き入れることにした。
のちに、子供の正体はなんとアリクイだったことが判明。そのため、成長するにつれてみるみる大きくなり、体を鍛えたこともあって、彼はやがて立派な体格の青年になった。
子供、もといアントイーターは、その腕っ節の強さと、アリクイゆえにアリ警官を牽制できる強みを活かし、トリースカ組を守る用心棒の役目を得た。そして、スネイルやスパイダーやライトバグもその手腕を高く買い、他の組員と同じくらい目をかけた。
これが、現在の虫魂トリースカ組の成り立ちである。
ちなみに、トリースカ組がその悪名を轟かせているのはあくまで虫族たちの間だけであり、その他の種族の間ではむしろ存在すらあまり知られていない様子。
密造酒繋がりで、ビンカラトリオは交流こそ無いものの、彼らの存在を知っているらしい。