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    puyama

    ぷやま

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    puyama

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    よなべして書きました。セイバーのドゥリーヨダナと旅がしたかったが、アヴェンジャーのドゥリーヨダナオルタが出てきてしまったな。少しビマヨダになった。

    ーーわし様はセイバー、スヨーダナ!クル族の正当なる王にして最強最優の戦士である!ーーーーわし様はセイバー、スヨーダナ!クル族の正当なる王にして最強最優の戦士である!ーー


    「ドゥ……スヨーダナがいてよかった〜!」
    「んっふっふ、そうだろうそうだろう!」

    インドに発生した小さな歪み、微小特異点の修正に向け人理継続保障機関フィニス・カルデアは人類最後のマスター 藤丸立香とそのサーヴァントであるシールダー マシュ・キリエライトを送り出した。

    2人はレイシフト地点から程近い賑やかな街で、はぐれサーヴァントとして先んじて召喚されていたらしいセイバー スヨーダナと巡り合う。

    彼は既にカルデアに召喚されているバーサーカー ドゥリーヨダナの別側面らしい。

    癖のある紫髪にチャームポイントの顎髭、甘えた猫のような顔はまさしくドゥリーヨダナだ。

    そのスキルである「人悪のカリスマ」がもたらす人心掌握術も相違ない。

    拠点としているらしいこの街で、スヨーダナは街中の人々から大層に慕われ、大通りを歩けば両手いっぱいの貢ぎ物を抱えるほどだった。

    3人は屋台の集まる通りの一角に腰を据え、貢がれた菓子類を広げた。

    「もっもっ……この甘いカルツォーネみたいなのおいしい!むぐむぐ」
    「先輩、おそらくそれはグジャというスイーツで、もぐもぐ……」
    「よほど腹が減っておったのか?そう急ぐと喉を詰まらすぞ」

    夢中で菓子を頬張る少女らの口元をシルクのハンカチで時折拭ってやりながら、スヨーダナもまた甘いチャイを啜る。

    「マシュ、……あのさぁ」
    「どうしました先輩?」



    ◼️◼️◼️



    特異点修正のはじまりとしては穏やかな時間が映るモニターを眺めながら、職員や技術顧問らはマスターのバイタルチェックを欠かさない。

    そんな管制室の扉を、騒々しさの塊が無遠慮に開け放った。

    「オイオイオイオイ〜!此度の特異点はインドだとぅ?!どお〜してわし様を呼ばん!適任ここにあり!カルナとアシュヴァッターマンもおるのだぞ!!!ちっぽけな特異点なぞ更地よ更地ィ!!!」
    「違いねェ!でも更地はダメだぜ旦那ァ!!!」
    「フッ」

    インド古代叙事詩マハーバーラタにおけるスーパートラブルメーカー、バーサーカー ドゥリーヨダナ。

    そして親友である、憤怒を纏う情熱の戦士アーチャー アシュヴァッターマンと寡黙で気高い大英雄ランサー カルナだ。

    ドゥリーヨダナはドカドカとモニター正面を陣取り、続く2人はその少し後ろでモニターを見上げる。

    途端、カルデア中を揺るがすほどの爆音が轟いた。

    「もうわし様がおるではないかーーーッッッッ!!!」



    ◼️◼️◼️



    「私、だめかも」
    「そんな!突然どうなさったんですか!」
    「甘さがもうね……重い…………」

    たっぷりのお砂糖にこれまたたっぷりのギー、濃厚なミルクやスパイスもふんだんに使われた甘い甘いインドのお菓子軍団に、立香は早速の白旗をあげていた。

    「ふ〜む、小娘には甘すぎたか?ふふふ」

    スヨーダナはクスクス笑って皿に積まれた丸いベビーカステラのような菓子を3つほど鷲掴み、大口を開けてポイポイと放り込む。

    それを見たマシュの目がキラリと光った。

    「それはグラブジャムンでは?!」
    「グラブジャムンて何?」
    「世界一甘いお菓子ですよ!」

    世界一甘いなんて、今は無理だ〜!と立香が顔を顰めると、スヨーダナはまた心底おもしろそうに笑う。

    「んはは、さて、甘いものを食うたら今度は辛いもんがいいな」

    ジャラリと音を立て、スヨーダナの手のひらから何枚かの金貨が転がり出た。

    「ほれ、これで何か買って来るといい。わし様は山盛りの串焼きがよい!」

    あっちの揚げパンも美味そうだ!と顎で指す姿はまさに尊大な王様のようだ。

    立香とマシュはお互いの顔を見合わせるとニッと笑い、スヨーダナがそう言うならしょうがないね、他の屋台も美味しそうです、と揃って屋台の方へと歩きだした。

    「串焼きください、山盛りで!」
    「おや、あんたらスヨーダナの旦那の客人だろ?串焼きだけじゃなくこれも持っていきなよ」
    「旦那の客だって?じゃあこいつも持っていきな!」
    「なんだって!」「スヨーダナの客だと!」「うちにも寄ってって!」「これもやるよ」

    色んな屋台を楽しもうと思ってたのに!

    立香とマシュはたちまち人々に囲まれ、スヨーダナへの貢ぎ物を手渡され、15分もたたずにもとの屋台の一角へととんぼ返りする羽目になってしまった。

    「オウ、随分早い帰還だな」

    チャイのおかわりを持ってきた子どもに小銭を握らせていたスヨーダナは、これまた沢山の貢ぎ物に埋まった少女らを見ると鼻を鳴らして笑う。

    「わし様ってば愛されすぎとるからな〜」

    立香の腕に積まれた包みのいちばん上を手に取りビリビリと破いていくと、ご所望の串焼きだったらしい。

    一本手に取り、大きなひとくちでガブリと食らいつく。

    「うむ、うまい!マスターも食え食え」
    「えぇ〜!マシュ!食べさせて!」
    「た、食べさせ……!しょうがありませんね。先輩はいま両手が塞がっていますから…」

    先に貢ぎ物を下ろしたマシュがスヨーダナから受け取った串焼き肉を立香に差し出し、立香はハフハフと食いついた。

    「うま…うま……」
    「それはよかった!でも、こんなにいっぱい頂いてしまっては食べきれませんね」
    「わし様も山盛り買えと言うたがもう入らんな〜」
    「スヨーダナが買ってこいって言ったのに!」

    ようやく荷を下ろした立香がもう一本の串焼きに手を伸ばすと、スヨーダナはすっかり興味を失ったように食べ終わった串を弄んでいる。

    「ではそこらの小童どもにやるがいい。ここのガキどもはどいつもこいつも大食らいだからな」

    そう言われて周囲を見渡すと、屋台の裏や通路の端、建物の窓から多くの子どもたちが指を咥えてこちらを眺めているようだ。

    少女らは、そういうことなら……と目配せし合う。

    「え〜と……」
    「ゴホン、では、先輩どうぞ」
    「わ、わぁ〜!ごはんもお菓子もいっぱいあって食べ切れないなぁ〜!」
    「誰か一緒に食べてくれる人、いませんか〜?」

    2人の下手くそな呼び込みを皮切りに、そこら中から元気な子どもたちが湧いて出てきた。

    そして、みな大食らいというのは本当のようで、あんなに沢山あった串焼きも揚げパンもとんでもなく甘いお菓子たちも、あっという間になくなってしまった。

    「元気すぎてヤバ〜」
    「スヨーダナさんは、いつもこのようなことを?」

    いつの間にやらまたチャイを飲んでいたらしいスヨーダナは、マシュの問いに「さぁな」とだけ返した。



    ◼️◼️◼️



    特異点修正をサポートするカルデアの管制室はいま、いつにない重苦しさに包まれていた。

    先ほど職員全ての鼓膜を破裂の危機に晒したドゥリーヨダナは、カルデア技術顧問、レオナルド・ダ・ヴィンチによる超絶怒涛の大説教を受けた。

    アシュヴァッターマンとカルナの嘆願もあり、彼ら3人は管制室のすみっこで黙ったままでモニターを眺めることだけは許され、大人しくそれに従った。

    しかしこの重さは、ただの説教がもたらしたものではない。

    ドゥリーヨダナの傍で控えているアシュヴァッターマンとカルナの両名が段々と剣呑な雰囲気にのまれていくのを、職員たちはひしひしと感じていた。

    そしてこの沈黙を破るのはやはり、厚顔不遜で勇猛なカウラヴァの旗頭、ドゥリーヨダナである。

    「なぁなぁダヴィンチちゃんよ」
    「……なんだい」
    「この茶番、いつまで続ける気だ?」
    「どういうこと?」

    酷い緊張感と薄暗い不安感が混ぜこぜになったような空気など存在しないような、まったく平時と変わらぬ顔で、ドゥリーヨダナはモニター前へと歩み出た。

    「こいつ、全然わし様じゃないぞ」



    ◼️◼️◼️



    騒がしい子どもらは家路につき、畳まれた屋台たちは眩い橙の光に包まれていた。

    「すっかり楽しんじゃってたけど、特異点の修復に来たんだった」
    「そうですね、そろそろ定時連絡の時間です」

    時計を確認したマシュがカルデアとの通信を開こうとするのを、大きな手のひらが優しく遮る。

    手のひらの主は、ドゥリーヨダナらしからぬ、いつになく優しい顔で微笑んで、少女らを抱き寄せた。

    「……マスター、わし様はここまでだ」

    ビュオオオオオオーーーー!!!!!

    突然の凄まじい暴風が街を襲う。

    「キャーーーーー!!!」
    「なんだ?!?!」
    「ウワーーーッッッ!」

    扉も窓も吹き飛び、屋台の群れは跡形もなく崩壊、周囲は一瞬にして阿鼻叫喚に陥った。

    「マスター!私に掴まってください!」
    「マシュ!!!」

    スヨーダナの腕の中、立香とマシュは身を寄せ合って風を凌ぐ。

    一陣の風と形容するにはあまりにも暴力的な風が止むと、カルデアから緊急通信が入った。

    ーー立香ちゃん!マシュ!無事かい?!ーー
    「ダヴィンチちゃん!」
    「はい、マスター、マシュ・キリエライト共に無事です!」
    「これはこれは、カルデアの」

    先ほどまで甘く優しい笑みを浮かべていた男は、いまは酷く軽薄そうな笑顔を貼り付けて、腕をゆっくりと広げる。

    マスターを抱えたマシュは後ろへ飛び退き、素早く盾を構えた。

    「まぁそう構えるな。あ、いや、構えたままがよいか」

    スヨーダナはやれやれ、といったふうに手を広げたまま、軽いため息をつく。

    「わし様、あんまりこの姿は好かんのだが」

    癖のある紫髪はふくらはぎに届くほどまでスルスルと伸び、黄金の鎧は白く豪奢な礼服へと変化した。

    ーースヨーダナの霊基グラフが変化した!?ーー
    ーー待って!強力な霊気反応が高速で接近!!!ーー
    ーー人理定礎値が急激に上がってる!?まずい!これは!ーー

    緊急事態らしい、ダヴィンチが慌てている、立香もマシュもそれはわかっていたが、目の前の光景から目が離せない。

    よく知る男だった。

    つむじ風と共にゆっくりと空から舞い降りる。

    快活に笑い、豪快に食い、怪力無双の、恐るべき男。

    「ビーマ……」
    ーービーマではないか!!!!!!!ーー



    ◼️◼️◼️



    「ビーマではないか!!!!!!!」

    再びカルデアに轟音が轟いた。

    しかしもう説教をする余裕はない。

    「おいおい今すぐわし様をレイシフトさせよ!!!」
    「人理定礎値の測定急いで!」
    「何をしておるのだわし様(仮)〜!!!はやくぶっころさんか!!!」
    「ビーマの霊気グラフもカルデアのものと一致しません!」
    「旦那ァいまそれどころじゃねえよ」
    「スヨーダナ、クラスはアヴェンジャーです!」
    「イヤ〜〜〜!!!やだやだやめろおまえ何をして!!!!ぎゃーーーーーーーー!!!!!」



    ◼️◼️◼️



    「んふふ、ははは、驚いたか?」

    愉快そうに、嬉しそうに、愛おしそうに、男は笑った。

    その宿敵のはずの大英雄、ビーマはただ黙って隣に佇んでいる。

    「改めて自己紹介としようか。俺はスヨーダナ。この世の全てを、憎き宿敵さえも手に入れた、王である」

    あ〜はっはっは、ひ〜ふふふ……、今にも転げそうなほどに笑うスヨーダナにビーマの太い腕が伸び、その腰を支えるように抱き寄せた。

    「あぁコラ、勝手に触るな、離さんか!ッカ〜〜これだから野生児は困る!やはりバーサーカーしつけ教室に通わせるべきだな」
    「……」

    スヨーダナはビーマから逃れようとしばらくもがいていたが、すぐに諦め、立香とマシュに向き合う。

    「というわけで、俺は宮殿に戻る。せいぜいがんばれ。ほら、行くぞ」

    ビーマに抱き抱えられ、スヨーダナは東の空へと飛び去った。

    ーーこら!待て!!!!おいマスター早く追いかけろ!!!!!ーー

    何もかもがめちゃくちゃになった街の夕日はとっくに沈み、ドゥリーヨダナの騒がしい声だけが響いている。



    続く(続かない)





    設定メモ

    スヨーダナ…アヴェンジャー ドゥリーヨダナ・オルタ。ビーマの願いを受けた聖杯が作り出した。

    ビーマ…バーサーカー。ドゥリーヨダナと喧嘩をした後レイシフトした先で聖杯を丸呑みした巨大魚を解体した。俺は奴を愛してもいいが、奴が俺を愛さなければ意味がないのでは。

    ドゥリーヨダナ…5000dBで喋る。ご飯やお菓子は小さなお口で食べるし、他人の世話など死んでも焼かない。慈善活動なんて興味もない(ただし腹をすかしたガキとは平気で食卓を囲む)。チャイより酒が好き。
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