現パロ四話 その家は海岸線にぽつんと建つ平家だった。
とてもちいさな一軒家で、ノブ式の押し戸を開けるとすぐ左にキッチンがあった。そのキッチンから変色した畳敷きの居間が仕切りなく続く造りになっていて、居間の他には襖で仕切られた寝室がひとつぽっきりの、古めかしい間取り。わたしが訪れた当時、大型家具のほとんどは既に処分された後だったようで、洋服ダンスやテレビ台の日焼けの跡が畳に残っていた。六畳ほどの居間の真ん中には処分を免れたと思わしきちゃぶ台が置いてあり、その傍らに当時中学生だったシンがいたのだ。台風の接近予想で休校だったはずだが、彼は制服を着ていたと思う。
頭上で雷が轟いていた。風に煽られてごうごうと飛沫を上げる黒い海が、海沿いに建つ家を今にも飲み込んでしまいそうな勢いでうねり、吹き込む雨風から逃れるために後ろ手に扉を閉めなければならなかった。コンクリート作りの玄関に突っ立ったまま暗い室内を見回し、シンへ向かってこう尋ねた。
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