神の亡骸 友人が突然変なことを言い出した。
──神様がいる。
呆然とした顔でそう言った友人に、まず頭の心配をしたおれは悪くないはずだ。
やつの言う『神様』は、語学の講義でよく顔を合わせる女子学生だった。大学入学で浮かれたついでにうっかり一目惚れでもしたのかと思いきや、そういうわけでもなさそうだ。なら女神だと拝みたくなるほどの絶世の美女かといえば、そうでもない。可愛い子だとは思うが、いわゆるミスキャンパスに選ばれたりだとか、そうでなくても学内で噂になるほどとか、そういうのじゃない。周囲を見回せばそれなりにいる『可愛い』だ。首を捻るおれに、そいつは顔を青くして首を横に振った。
「そういうのじゃない! めったなこと言うな、馬鹿!」
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