安眠 凡人になってから睡眠を取るようになったのは良いが、寝付きも悪ければ眠りも浅く、寝付いたと思えば悪夢を見る。と鍾離様は言っていた。
これは悩みを自分に吐露されているのだと思い、自分に出来ることがあればなんなりと申し付けてくださいと伝えたところ、夜の間傍にいて欲しいと仰った。
鍾離様の眠る様をただ見つめているとは、なんと贅沢な時間なのだろうか。そんな不敬なことを思いながら、夜の帳が下りる頃、寝台の傍らに立った。
「魈。何をしている?」
「あ……鍾離様の方へ視線は向けないようにしますので、どうぞお気になさらずお休みください」
ゆらゆらと揺らめく灯りの傍で、睡衣をお召しになっている鍾離様を見るのは我にとって目に毒であった。雄々しい輪郭がいつもより露わである。やましい気持ちなど一切ないが、鍾離様の普段は見えない肌が嫌でも瞳に写ってしまう。
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