イッサのタコ兵時代の話 ネタメモマイイカ設定裏を見るとより楽しめます。
描きかけandネタメモです
イドラクンが帰ってくる話
数日前...実習生イドラの除隊処分が下された。理由は「戦力不足」。先生はその時から違和感を感じていた。イドラの戦力は訓練生、現役兵の中でもトップに入るはず。詳細を見ると、「日々の訓練に耐えられず...」とあった。体調が良ければ現役兵クラスの訓練には耐えられるはずだった。少し彼にはきつかったか...?
先生は救護室にいなければならない。心配な様子でイドラの帰りを待っていた。時計を何度も見て、まだかまだかと心待ちにしていた。
コンコン、と小さなノックがあった。初級部の子供かと思って扉を開けた。
「おや、どうした....イ、イドラ...?」
「せんせ...ごめん...」
怪我をしたらしい足を引きずり、荷物が入った重いバックを引き下げたイドラがいた。最初の勢いがあった様子は既になく、隈があり、とても弱っていた。松葉杖は持っておらず、涙を流していた。実習生として部隊に行くことはとても栄誉なことの反面、除隊処分は屈辱的な事だった。呼吸をするたびに音が鳴る。声も小さい。とぼとぼとベッドに向かい、ぼふっと横になった。
「イドラ、なにがあったんだ?」
「...」
イドラはただ横になるだけで、何も喋らなかった。呼吸が浅い。けほけほと咳をした。咳と共に血が出た。先生は口元の血を拭き取ってやり、酸素マスクをつけてあげた。少しは楽になったらしい。足の雑に巻かれた包帯を取り、足を診た。ひどい打撲だった。よほど放置されていたらしく、治りが悪い。部隊では治療は自分でやるのが原則だが、経験が浅い実習生には他の隊員がついて一緒に治療してあげるはずなのだ。
因子器官がある下腹部から発作による影響が広がっている。イドラがたまに消化不良を起こして吐いてしまう原因は幼少期の発作だった。最近は肺に影響が出始めている。しっかりと処置をすれば影響はなくなるはずなのだが。この様子だと、肺の一部が潰れている。下手をすれば、永遠にこのままの可能性がある。とてもではないが痛ましくて見ていられない。
...
イドラが起きた。話を聞いた。
「他の奴の何倍も...何十倍も頑張れるのに...なんでっ...どうしてこんな身体なんだよ...」
ポロポロと泣いていた。気持ちはわかる。イドラは得意なバトルと建築設計に関しては人一倍努力していた。先生の言うことも聞かず
に夜更かししたり早起きして特訓に励むほどだった。それで体調を崩すことも少なくなかったが、やめる様子はなかった。
気持ちが落ち着くまで、実習のことには触れないようにした。今はただ体調を整えることに専念しよう。
翌日早朝。
仮眠をとっていた先生が起きると、イドラの姿は無かった。あの足で自主練はイドラのためにはならない。余計苦しむだけだ。急いで探しに行く。
誰もいない射撃場。携帯型の酸素マスクを片手に動き回る彼がいた。少し動いては酸素を吸い、また動く。足は補助するものを全て外し、普通に動かそうとしていたが、さすがに痛むようだ。たまに苦しそうな顔をした。
「イドラ!もうやめなさい!」
「やだ!」
げふっと咳をした。
「俺はまだやれるんだ!こんなの全然大丈夫だから!」
「イドラのためだ!こんなことをいつまでもしていたら身体は良くならない!休むことも大切だ!」
「こんくらいの苦しいのはまだ我慢できる!俺はやる!」
また呼吸の音がした。胸を苦しそうに押さえるが、続けようとした。先生はイドラを抑えつけて無理矢理止めようとするが、そんなのは振り払った。どこかへ行ってしまった。足は速く、先生は見失ってしまった。
訓練が始まる時間になると、先生は万が一に備えて救護室にいなければならない。今すぐにイドラを探しに行きたいのに。ずっと落ちつかない様子でそわそわとしていた。トイレに行こうと部屋を出た。そのついでに何も起こらないでくれよ、と祈りつつイドラを探しに行った。
イドラは他の訓練兵と一緒に訓練をしていた。パフォーマンスがかなり落ちている。監督の先生に今すぐにイドラに訓練をやめさせるように言った。イドラは救護室のベッドに戻された。枕を抱きしめて丸まっていた。
後日、救護室から見える外での運動は許した。片足を無理に動かさないように、呼吸を荒げるほど動かないように見張った。たまに動きをやめ、グラウンドでの訓練の様子をじっと見ていた。イドラは大人しく本を読もうにも不眠が原因で内容が頭に入らず、設計コンセプトを描こうにも線がヨレヨレになってしまっていた。
そんな暮らしが続いて数週間後。
足も胸も良くなっていたので、午前だけ訓練に出した。無理をしないようにきつめに言い聞かせた。周りの訓練生からは、「イドラがおとなしくなった」「注意したら言葉より手が出るのに、最近は舌打ちだけになってる」と言われている。午後の座学は救護室で先生と2人きりで取り組んでいた。