私を温めるのは君 重く感じていた湿気を纏う空気は午後になって雨になっていた。雨が次々と打ち付ける窓ガラスは斑のような模様になって外を見ることが出来ない。あっと言う間に「バケツをひっくり返したような雨」だ。
視線を手元のファイルに戻す。資料室から自分のデスクへ持ってきた数冊のファイル。現在追っている事件との関連性を調べるためにピックアップした、古い事件の記録。警察官としての人生も長くなってきたが、未だに多少は気が滅入る。遺体、凶器、血溜まり。几帳面にファイリングされた写真を一瞥し、捜査記録書類を読み込む。
目ぼしい情報がなく閉じたファイルはこれで六冊目。見当違いだっただろうか。次の一冊に手を伸ばした所で捜査一課の部屋がにわかに騒がしくなる。入室してきた彼を認めて、人だかりの中へ向かった。
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