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    mame

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    mame

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    本誌ネタの付き合ってない千ゲ(🏹と💎)

    「やだやだ! 絶対千空ちゃんとは乗りたくない!」
    「? んでだよ、体重同じなんだ。バランスとりやすいだろが」
    「俺女の子と乗るから〜!」
    「だーっ! うるせえ! 黙って乗りやがれ!」
    「ヒイイイイイ!」

     すいーっと剥き出しの崖沿いに上昇していく千空とゲンをクロムは見上げる。ゲンの悲鳴もすっかり聞き慣れてしまっていたけれど、北米ではなかなか聞くことが出来なかった。久しぶりに聞けば石神村のことを少し思い出し、彼らと共にあることがすっかりクロムの常になったのだなとクロムはひとり小さく笑った。
     千空に引きずられるようにして涙目でエレベーターに乗り込んだゲンの姿を思い出し、クロムはいまだに聴こえる叫び声に腕を組みながら首を傾げる。口から漏らしたのはあくまで独り言のつもりだった。

    「しっかし、ゲンのヤロー。なんであんなに千空と乗るの嫌がったんだ?」
    「千空と乗ると思う存分ビビれちゃうからじゃないかな」
    「羽京」

     いつのまにかクロムの隣に立っていた羽京を見やると、クロムと同じように上昇するエレベーターを眺めている。

    「お酒に酔ってる人間がいればゲンは介抱するタイプだよね。その代わり気心知れた仲で飲む時みんなお酒に強いとかだったら割とすぐ潰れるタイプでもあるんじゃないかな」
    「あー、言いたいことはわかるかもしんねえ。ビビんねえ千空と一緒だとビビっちまって怖くなんのか」
    「まあ僕の勝手な予想だけど」

     羽京が頬を緩めながら優しい眼差しでエレベーターを見るので、釣られたようにクロムも空の青に向かって小さくなっていくエレベーターに視線を移した。
     地形のせいか風の音がヒュオォと細かく鳴りながらあたり一帯に吹いている。青空を流れる雲は細かくちぎれ、あっという間に去っていった。

    「あと……吊り橋効果になりたくない、とか」
    「吊り橋効果?」

     僅かに声量を下げた羽京が発した単語にはまったく聞き覚えがなかった。吊り橋ってあれだよな、と脳内で石神村のカセキが作った橋を思い浮かべ、クロムが頭を捻れば羽京がこくりと頷いた。

    「うん、恐怖を一緒に体験した相手とは恋愛になりやすいんだって。なんでも恐怖のドキドキと恋愛のドキドキを脳味噌が勘違いしちゃうからとか」
    「へー! 吊り橋渡ったときのグラグラがコエーってとこからきてんのか」
    「そう言うことだと思う」

     それならば石神村の吊り橋を想像したのは不適切だった。あの橋はカセキが作ったと言うだけあって、かなり揺れが少ない。
     吊り橋効果ねえ、と覚えたての単語を反芻しながらクロムは風に飛ばされるゲンの喚き声を聞く。しかしあまり納得がいかなかった。

    「……今更じゃねえか?」
    「え?」
    「いや、だってアイツら、常に吊り橋みてえな状況一緒に切り抜けてきてんじゃねえか。それならもう恋愛に発展してんじゃねえの」

     大きく首を傾げてクロムが言えば、きょとんと目を丸くして羽京がクロムを見ていた。唇を尖らせ、眉間に皺を刻み意味がわからないと顔面で伝えれば、驚いた表情だった羽京がそのままくしゃりと破顔した。

    「ほんと、悪あがきだよね」

     くすくすと肩を揺らしながら羽京がまたエレベーターを見上げた。やたら楽しげな雰囲気からして、この話はどうやら終わりらしい。クロムもふたりが無事降りる姿を見届けるべく再び顎を上げた。ふたりが崖の上にたどり着くまでもう少しのようだった。
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