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    mame

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    mame

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    出ロデ 書きたいとこだけやりたい放題fateパロ

     ドアを開けたと同時、ロディの髪を強い風が攫った。
     しかし構うことなく、高層ビルの屋上に飛び出したロディはそのまま全力でコンクリートの床を蹴る。辺りを見回すが、隠れられそうなところは無い。ビルの淵まで駆け寄るが、転落防止の柵の先にはなにもない夜の海が広がるのみでなんの助けにもならない。隣のビルに飛び移るには距離があり過ぎるし、挑んでみても落とした熟れたトマトのようにロディは生を終えるだろう。
     ドアが締まる音が耳に届き、ばっと振り返るとこちらにも絶望が広がっていた。ロディは唇を噛み締める。
     なんだってこんなことに。
     ロディは数メートル先に立つ男を見つめる。男が持つ手には拳銃が握られており、その銃口は間違いなくロディに向けられていた。男の隣にはロディの弟と年齢があまり変わらなさそうな幼い少女。ただ、クリーム色の長く美しい髪の毛を強い風に踊らせる少女と、脳裏に浮かぶロディのかわいい弟とでは決定的に違うところがある。混乱するロディにだって理解できた。
     少女は"ヒト"じゃない。
     暖かい肌色は次第に病的なまで肌の白さへ変化していっている。砂時計の砂を落とすような変化スピード。その変化に比例してどこからか現れた黒い植物の蔦のようなものがシュルシュルと伸び、静かに、しかし怪しくロディへ向かってきていた。
     この状況が全くわかっていないロディでも、本能で分かった──アレに触れたらヤバい気がする、と。
     じり、と踵を後ろにズラす。背中をたらりと落ちたのは冷や汗だ。
     伸びてくる蔦から逃げるために動けば発砲されるに違いなかった。ぐっと奥歯を噛む。八方塞がりだ。

     ロディは運び屋だ。
     スラムにほど近い場所で幼い弟と妹と暮らしている。今日はこのビルの地下で行われる取引に使われるアタッシュケースを運んでいた。
     厳重に鍵をかけられたアタッシュケースを、取引場所に到着したときについ落としてしまったのがことの発端だ。落とし所が悪かったのか鍵が外れて中身が出てしまった。慌てて中から出てきた緑がかった汚れた布と、怪しい紋様が描かれている紙をロディは拾い上げた。その際に指先を切ってしまった、いて、と小さく顔を顰めたその時、眩い光が紋様をから放たれた。あまりの眩しさに目を閉じ、次に目を開いたときには、尻餅をついているロディの目の前に見知らぬ男が立っていた。柔らかい表情をした、ロディと年齢が変わらなさそうな男は、ロディを見つめ驚いた表情を見せてから、ふっと息を漏らすように微笑んだ。
    「君が僕のマスターかな」
     尻餅をつきっぱなしだったロディに手をのばし、立ち上がらせてくれた。
    「僕はデク。クラスはーーあれ、ルーラー?」
     不思議そうに話だしたその男といくつか話している間に、取引相手が血相を変えてやってきた。そうして開いたアタッシュケースを発見し、激情した男に追いかけられて今に至っているのだが──ロディはハッとする。そうだ、アイツは言ってた。
    「必ず僕が君を守るよ」
     出会った直後に言われて訳が分からなかったけれど、それでも不思議と噛み付く気にはならなかった──そもそもアイツどこ行った。
     向けられた銃口、伸びてくる怪しげな蔦、守ると言っていたくせに何故かここにいない男。
     いろんな理不尽に段々腹が立ってきたロディは腹にぐっと力を入れる。そして、夜の空へ向かい、思い切り叫んだ。
    「デクーー!!」
     ロディの命を奪おうとする正面の人間たちが怯んだ直後、ロディは柵に手をかけ飛び越えた。どうせ死ぬなら、一か八かにかけたかった。
     飛び越えた先はもちろん宙だ。体に触れるものなんか何もない。途端に強烈な重力がロディにかかり、内臓が体の中で持ち上がる感覚に息が止まりそうだ。何メートルもの高さから飛び降りたロディの体は、自然の摂理に従い落下を始めた。恐怖に意識が飛びそうになった瞬間、隣から声がする。
    「呼んでくれて助かったよ、まだ霊基が安定してなくて手が出せなかったんだ! 遅れてごめ、」
     さっき出会ったばかりの男はロディの隣でロディと一緒に落下していた。孤独な空がそうじゃなくなったことに一瞬気が抜けそうになる。訳の分からない単語が飛び出していたが、いまはそんな話をしている余裕なんてないのだ。相手の言葉を遮りぐわっと口を開ける。
    「ちゃ! 着地!! 着地どうにかしてくれ!」
    「アバウトな注文だね、マスター!」
     裏返った声で必死にロディが叫べば、ぷはっと笑う男のフードがバタバタとうるさい。白いグローブをつけた手が、ロディの腕を掴む。力強い眼差しが、ロディを射抜く。
    「でも大丈夫!」
     そのまま引き寄せられ、片腕でぎゅっと体を支えるようにして抱きしめられる。
    「なんでって?」
     男の肩に、頭を押さえつけられた。衝撃に備えるようなその体勢。不思議な安堵感に包まれた。
     しかし視線の先にはもう地上が迫っている。このまま落ちれはジ・エンドだ。
    「僕が来た!」
     ロディが息を呑むと同時。眩しいばかりの笑顔をロディに向けた、デクと名乗ったその男はびゅっとロディを抱える反対側の手から黒い鞭のようなものをびゅっと発射させたのが見えた。
     落下していた体がぐっと止まる。そしてぐっと体が持ち上がり、そのまま引き上げられるように上昇し始めたかと思えば、今度はビルとビルの間を猛スピードで移動が始まった。また地面が遠のく。
    「う、うわあああああ!!」
    「マスター、口閉じて! 舌噛むよ!」
     このまま移動して撒いちゃおう、なんてデクが楽しげに言う。そこでやっとロディは追跡されていることに気がついた。慌ててデクに抱きつく腕に込める力を強くする。デクが、小さく笑った気配がした。
     地上を歩く人々が驚きの表情でロディたちを見上げていた。当たり前だ。ロディだって街中をサーカスよろしく空中ブランコのように移動している人間がいたら凝視するに違いない。
     街を彩る光がロディの横を流れていく。果たして今日、ロディは家に帰れるのだろうか。
    「絶対に守ってみせるから、安心してよロディ」
     ぐるぐると目を回しそうになっているロディは気づかない。
     名乗っていない筈のロディの名前を、デクが知っていたことに。その理由を知るのは、もう少ししてからの話になる。
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