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    ひらさか

    @FrozenIce_apple

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    ひらさか

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    ジュニフェイ あるモブ女の失恋

    あまり乗り気ではなかったのに友達に引きずられるようにして連れて行かれたクラブで、私は運命の出会いをした。

    彼の名前はフェイス・ビームス。あの『ヒーロー』ブラッド・ビームスの弟にして、このクラブのDJをしている。ひとめぼれだった。
    「アハ、みんな集まってくれてありがとう。今日も俺のプレイ楽しんでいってね」
    友人曰くフェイス君もお兄さんと同じくヒーローをやっているそうで、HELIOSに入所してからはクラブに来る頻度も減ったため今日会えたのはラッキーらしい。『なかなか会えない』という言葉に後押しされて、普段はこんなこと絶対にしないのに、思い切って休憩中のフェイス君に声をかけた。
    「あ、あの!フェイス君!」
    「ん?君、見ない顔だね。ここは初めて?」
    「はい!フェイス君、すごくかっこよかったです!あの、連絡先交換しませんか?」
    「いいよ。はい、これ俺のアドレス。じゃ、楽しんでいってね〜」
    そう言うとフェイス君はひらひらと手を振ってまたDJブースの方に向かっていった。

    それ以来私はフェイス君行きつけのクラブの常連になった。友人の言う通り毎回フェイス君に会えるわけではなかったけど何度も足を運ぶうちにフェイス君も私の顔を覚えてくれて、その度にフェイス君への想いが強くなっていった。次はいつフェイス君に会えるかな、そう考えると退屈な日常も何となく楽しくなった。

    ある日、私をフェイス君のいるクラブに誘ってくれた友人がチケットを貰ったからとライブに誘ってきた。Zが4つでフォーゼット?と読むらしい。聞いたこともないバンドだしロックには興味が無いから悪いけど断ろうとしたら、どうやら以前そのバンドのライブでフェイス君を見たという人がいるという。
    フェイス君はかっこいい。私以外にもフェイス君を目当てにクラブに通う女の子がたくさんいる中でフェイス君との共通の話題があれば彼女たちよりもフェイス君に近づくことができると思い、二つ返事で着いていくことを決めた。

    ライブ当日。フォーゼットは兄弟でバンドを組んでいるらしい。弟らしい黒混じりの金髪をしたオッドアイの少年がギターボーカルとしてステージの真ん中に立ち、力いっぱい歌っている。どうやら少年はギターに専念したいらしく、曲が終わった後のフリートークでボーカルを募集していると言っていた。ふーん。そんな話を聞き流しながら会場を見回すと、フェイス君らしき人物を見つけた。いや、あの目立つ鮮やかなピンク色のヘッドホンを首にかけている姿は間違いなくフェイス君だ。やった、心の中で呟き、ライブ終了後の人並みをかき分けて必死にフェイスの方へ向かった。
    「フェイス君!」
    「あれ、君はクラブの...。君も来てたんだね」
    「本当はあんまりロックとか好きじゃないんだけどね、フェイス君がいるって聞いたから来てみちゃった。フェイス君はこういうの好きなの?」
    「うーん、まあまあかな。じゃ、俺人待たせてるから。またクラブでね」
    「う、うん!またね!」

    周りに女の子はいなかった。いつもクラブでフェイス君に群がる女の子達よりフェイス君に近づけた気がして心の中でガッツポーズをしたのも束の間、フェイス君が舞台袖の関係者以外立ち入り禁止の通路に入っていくのが見えた。人を待たせてるって言ってたけど、まさか、女の子だったりしないよね。フォーゼットには女子メンバーはいなかったけど、もしかしてスタッフ?考えたくもないけどそれならこの前のライブに来てたっていうのも説明がつく。
    そう考えるといてもたっても居られなくなって、気がついたら私の足はフェイス君が進んで行った方向へ動き出していた。

    関係者以外立ち入り禁止、と書かれたテープの前まで来た。さすがに関係者じゃないしこれ以上は入っちゃいけないとは思ったけど、スタッフ達はライブの後片付けで慌ただしく動いていて私の存在にも気が付かない。
    ...ちょっとくらいいいよね、フェイス君がいないか確認するだけだから...。
    気配を消して恐る恐る立ち入り禁止ゾーンに足を踏み入れた。

    「...っん...」
    テープをまたいだ向こうの地面に足をつけた瞬間、微かに艶のある声が聞こえた。まさか、フェイス君と誰かが?
    立ち入り禁止エリアに入ってすぐの曲がり角
    、未だ明るいステージから漏れる光に照らされた2つの人影に気づかれないようにそっと近づく。そこにはフェイス君より背の低い誰かがフェイス君を壁に押し付けて、何やら顔を近づけていた。よく見るとその誰かはフェイス君の腰を抱いて、もう片方の手はフェイス君の頬に添えられている。キス、してるんだ。
    かっと頬が熱くなった。やられた、と思った。さっきまでフェイス君といたのは私なのに。
    フェイス君にキスをしたそいつがゆっくりと顔を離す。フェイス君は驚いた顔をしていた。きっと無理やり迫られたに違いない。そう自分に言い聞かせたものの、その願いはすぐに打ち砕かれた。フェイス君の表情がゆっくりと驚きから微笑みにかわる。その瞬間がやけにスローモーションに見えて、声は聞こえないのにフェイス君の唇が紡いだ言葉をはっきり理解してしまった。
    『もっとして』
    その言葉に応えるように再びフェイス君よりも下の位置にある頭が近づく。喜びを隠しきれないというように微笑んだフェイス君の両腕がそいつの首に回ったところで見ていられなくなり、私はその場から逃げるようにライブハウスを後にした。

    一心不乱に足を動かし頭も冷えてきた頃、ようやく今夜の出来事を思い返すことができた。
    クラブでDJをしているときには見たことのない表情だった。あんなの見せられたら、否が応でも分かってしまう。あの子が本命なんだって。私もフェイス君目当てにクラブに通いつめる子達もどうやってもフェイス君の恋愛対象にはなれないって。
    友人に誘われたクラブで始まった私の恋は友人に誘われたライブで終わりを迎えた。






    そういえば、フェイス君に迫っていたあの子は一体誰なんだろう。おぼろげな記憶を辿り、そいつの特徴を思い出す。Tシャツにジーパンというシンプル、というよりボーイッシュな格好だったように思える。そしてその髪は、黒混じりの金髪。そういえばフォーゼットのギターボーカルの少年も似たような髪色をしていたような気がする。少年は肩につかないくらいの髪をハーフアップにしていた。顔を上に向け自分より背の高い人間を見上げれば、もっと長く見えるかもしれない。
    まさか、ね。
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