永遠を生きるラーマと転生を繰り返すビームの話銃声が鳴り響く。
身体に衝撃が走り、ラーマは地面に倒れた。どくどくと血液が流れ、自分の周りに血溜まりを作っていく。
ー私はもうだめかもしれない。
血液が流れ出る速度が速い。撃たれた部位はきっと急所なんだろう。ラーマが自分の最期を感じていた時、ビームの叫ぶ声が聞こえた。
「兄貴!」
駆け寄って来たビームが身体を抱き起こすのがわかり目を開けると、涙の粒を溢れさせた顔が視界いっぱいに広がった。口を動かして安心させたいが上手くできない。
「死ぬな!俺を置いて行くな!」
ー大地女神よ、兄貴を連れて行かないでくれ!
ビームの叫び声が遠くで聞こえる。残された力で目を開けると満点の星空の中流れる星が見えた。
次にラーマが目を覚ましたのは、前回の闘争から二か月ほど経った時だった。目を開けると相変わらずビームの心配した顔で視界がいっぱいになり、吹き出す。笑われたことに怒りもせず、良かったと抱きしめてくれるビームの身体は温かく、自分も生きてて良かったと思えた。
「なぜ私は生きているのだろう?」
あの時は血液の流れ出る速度も速かったから、急所を撃たれたもんだとばかり思っていた。
「銃弾は急所近くを掠めていたけど、身体に残らなかったから薬を煎じて兄貴の身体に詰めたんだ。ダメかと思ったけど、なんとかなったな!」
「そうか、ビームが私の命を繋いでくれたんだな。」
ありがとうと謝辞を述べてビームのほわほわの頭を撫でる。くすぐったそうに笑うビームは愛らしく、死んでしまっていたらこの笑顔も見られなかったのかと思い、神に感謝した。
そこからさらに半年後、ラーマの復帰戦は神のような戦いぶりだった。一人で何百人とイギリス軍人を倒す獅子奮迅の振る舞いで、イギリス軍もラーマを倒さないと勝利はないとばかりに襲いかかってくる。左腕に銃弾が掠め血が噴き出すが構うことなくラーマは弓を射った。
凄惨な戦いだった。
疲れ果てひとまずビームに傷薬を煎じてもらおうと陣営に戻ろうとした時、ラーマは先程受けた銃弾の傷がなくなっていることに気付いた。細々受けた傷もなくなっている。これは一体どういうことだろう。
試しにヤジリで指の腹を切ってみると、最初こそ血液が流れたがすぐに止まり、数分ののち傷口ごと全て消えてしまった。
「これは……。」
自分の身体に一体何が起こっているのか。
訳がわからずラーマは混乱した。とにかくビームのもとに帰ろう。そう思い陣営に足を進める。
陣営は森の浅い所にあり近付くと静かながら人の声が聞こえて、ラーマはホッと息をついた。
サクサクと足音を立てれば仲間がこちら確認し、口々にラーマだ!ラーマが帰って来た!と騒ぎ出す。テントの中で仲間の手当てをしていたのだろうビームも出て来て迎えてくれた。
「兄貴!今日は凄かったな!怪我はないか?」
「あぁ、それなんだが……、ちょっと中で話をしないか?」
キョトンとするビームを誰もいないテントの中に連れ込み座らせると、自身も座り、撃たれた左腕を見せた。
「これを見てくれ。」
「これって?どこだ?なんもねーぞ?」
「そうなんだ、撃たれたはずなのに、何もなくなってしまった。」
え?っと驚くビームに更にこれを見てくれと、今度はヤジリで手のひらを傷付けた。
「あ、兄貴!やめろ!」
「見ててくれ、ビーム。」
咄嗟に矢を払い除け、持っていた布でラーマの手のひらを押さえたビームだが、布が全然血塗れにならないことに疑問を感じ、恐る恐る布を押さえる手を緩めた。
「え?なくなってる!」
傷口がない事に驚くビームにラーマは頷き
「なぜか治りがはやくなってるみたいなんだ。」
と、言った。
それを聞いたビームは驚かず、きっと大地女神のご加護だなと笑った。
その後ラーマの身には不思議な事ばかり起こった。例えば髪を以前のように短くしてもすぐ伸びて元の長髪に戻ってしまったり、髭を剃ってもすぐ生え揃う。
もしかして歳も取らないのでは?と変に勘繰っては、そんなわけないかと思う日々が続いていた。
ー兄貴は大地女神に好かれているんだな
ビームは笑顔でそんな事を言う。大地女神に好かれているのは君だろう、と言えばいつもお互い笑顔になる。そんな時間がラーマは好きだった。解放闘争がなければずっとビームと一緒に過ごせるのに、幸せはいつもラーマの手のひらから溢れていく。
暫く大きな闘争が続き、仲間が一人一人と倒れていく中、ラーマだけはどんな怪我をしても死ななかった。それは仲間の士気をあげ、こちら側が有利になっているようにも見えた。しかし、辛い現実はラーマの元にもやってくる。ビームが銃弾で撃たれたのだ。迸る血液に仲間が皆もうダメだと思ったが、ラーマだけは大地女神に祈り続けた。
「大地女神よ、やめてくれ!ビームを連れていくな!」
悲痛な叫びをあげて星々に願ったが、ラーマの願いは叶う事がなかった。