よく眠れるおまじない 同じ部屋を取るのは初めてだった。部屋が全て埋っているというのだから仕方ない。
僕としては廊下に転がされてるのでも、なんなら外でも構わなかった。なにせ今日は雨が降っていないので。
「僕たちは適切な距離を保っているべきだと思うから、それでいいだろ?」
そう言うと、レイシオは常に不機嫌そうな顔を、いっそう歪めた。
「よくない」
「僕、慣れてるから」
「慣れていることは、今日もそうであっていいという理由にはならない」
「わ、善良だ!」
「善良とは得てして誉め言葉として使うものだ」
「文句のつけ方が陰湿だね」
溜息をついたレイシオが僕の二の腕をぐっと掴む。
「痛い痛い! おいレイシオ! 怪我人だぞ!?」
「怪我人は大人しく医者の言うことを聞け」
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