未完つかるい2誰かに会いたいと思うなんていつぶりだろうか。
何気ない日常の、例えば、朝目覚めたときや、自室でロボの部品を組み立てているとき。そういう変わらない日々のを生きていると、ふと、あのあたたかい黄色の髪が脳裏にちらつく。次いで、自信たっぷりといった態度で周囲を明るく照らす笑顔。畏怖や軽蔑の色を一切含まずに名前を呼んでくれる声。そこまで思い出すと、途端に寂しさに襲われる。
一日が長い。早く会いたい。
少し前まで感じることのなかった思いに戸惑う。けれど、彼と出会ったことで自分が変わっているのだろうと結論付ける。彼、天馬司は、いつも類に色々なものを与えてくれる。この感情も、そのうちのひとつに過ぎないのだ。
*
「いつの間にか僕のなかで、司くんはとても大きな存在になっていたようだ」
なんの脈絡もなく告げる本音。たまたま二人きりになれたから、最近思っていたことをそのまま告げた。
「なっ、突然どうした」
司くんは目を見開いて驚きを顕にしている。分かりやすい表情になんとなく面白くなって、ほんの少し笑ってしまった。
「フフ、僕はただ思ったことを正直に話しただけだよ」
この言葉に偽りはない。タイミングはおかしいかもしれないが、いつかは司くんに伝えようと思っていたことだった。けれど、司くんは複雑そうな表情でじとっとこちらを見てくるだけだ。
「何か僕を疑っているのかい?ひどいなぁ、僕は純粋に司くんへ感謝を伝えたいだけなのに」
そう言って目を伏せると、「うぐっ」という声と共に司くんが申し訳なさそうに頭を下げてきた。
「すまん……その、疑ってしまって……」
なにも十割司くんに非がある訳でもないのにすぐに謝るところを見ると、本当に真面目な人だなあと思う。
〈中略〉
「繋いだ手は今度こそ振り払われずに、きゅっと握り返された」