デカラビアの遺書ようやくお前と二人きりになれたな 軍団の奴らもよくやる あの日から今日まで、1日たりとも俺の監視を怠らないとは
え?
まあ、それだけのことを俺がしてやったという話だが…… そら
なんだこれ
遺書だ
遺書!?どうして…
なぁに お前の懐の他には 預ける場所もないからな
なんのつもりか分からないけど受け取れないよ これじゃデカラビアが死ぬみたいじゃないか
相変わらずだな 中身の警戒ならともかく そんな理由で受け取らないとは 情か?
情だよ! 情そのものだよ
まあ お前がそんなだから俺はここにいるわけだが いささか死に敏感すぎるんじゃないか 遺書というから受け取らないなら 万が一のときにお前が見る書置き程度のものと思えば良い 俺は自ら死ぬような馬鹿な真似はしない どんな格好をさせられてもな
…デカラビア これ 何が書いてあるんだ?
ふん、それを聞くのか?
いや、俺に遺書を書いたらどうかって言ったことがあっただろ?そのとき俺は みんなに残せるものは特に思いつかないから 何を書いたらいいかわからないって言ったと思う だから デカラビアが俺に残すものって何だろうって思って…… でも、よく考えたら わざわざ書いたものをここで聞いても意味がないよな ごめん
いいや? 遺書というのは、書いた者が確かにそう思っていたということを証明するためにある 口約束ではなく直筆の手紙が存在するのが肝要なのだ だから今中身を聞いたとしても、俺がそれを渡す意味はあるぞ
そうか 確かに じゃあ…
言うと思ったか?
なんだよそれ!
そんなに気になるなら封を切れば良い
それじゃ「証明」にならないだろ?
そうだな
はあ やっぱりデカラビアって悪っていうか、意地悪だよな 頼りにはなるけどさ! ……じゃあこれは大切に保管するよ それでいいよな?
ああ 頼んだぞ
遺書の中身はくだらんものだ 件の作戦で使わなかったいくつかの拠点の場所、そこに残っている物資について それから「生まれ変わった」お前の故郷は本当につまらない村で、どいつもこいつもそれなりに上手くやっていたということ
つまり、俺が証明したいのは中身ではなく 俺が俺の意思でお前に命を預けるということ 敗れた者も矜持くらいは守らなければ、次に進めまい