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    伊坂台

    @j_ledig

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    伊坂台

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    SS 喋ってるのはソロモンとデカラビア

    デカラビアの遺書ようやくお前と二人きりになれたな 軍団の奴らもよくやる あの日から今日まで、1日たりとも俺の監視を怠らないとは
    え?
    まあ、それだけのことを俺がしてやったという話だが…… そら
    なんだこれ
    遺書だ
    遺書!?どうして…
    なぁに お前の懐の他には 預ける場所もないからな
    なんのつもりか分からないけど受け取れないよ これじゃデカラビアが死ぬみたいじゃないか
    相変わらずだな 中身の警戒ならともかく そんな理由で受け取らないとは 情か?
    情だよ! 情そのものだよ
    まあ お前がそんなだから俺はここにいるわけだが いささか死に敏感すぎるんじゃないか 遺書というから受け取らないなら 万が一のときにお前が見る書置き程度のものと思えば良い 俺は自ら死ぬような馬鹿な真似はしない どんな格好をさせられてもな
    …デカラビア これ 何が書いてあるんだ?
    ふん、それを聞くのか?
    いや、俺に遺書を書いたらどうかって言ったことがあっただろ?そのとき俺は みんなに残せるものは特に思いつかないから 何を書いたらいいかわからないって言ったと思う だから デカラビアが俺に残すものって何だろうって思って…… でも、よく考えたら わざわざ書いたものをここで聞いても意味がないよな ごめん
    いいや? 遺書というのは、書いた者が確かにそう思っていたということを証明するためにある 口約束ではなく直筆の手紙が存在するのが肝要なのだ だから今中身を聞いたとしても、俺がそれを渡す意味はあるぞ
    そうか 確かに じゃあ…
    言うと思ったか?
    なんだよそれ!
    そんなに気になるなら封を切れば良い
    それじゃ「証明」にならないだろ?
    そうだな
    はあ やっぱりデカラビアって悪っていうか、意地悪だよな 頼りにはなるけどさ! ……じゃあこれは大切に保管するよ それでいいよな?
    ああ 頼んだぞ

    遺書の中身はくだらんものだ 件の作戦で使わなかったいくつかの拠点の場所、そこに残っている物資について それから「生まれ変わった」お前の故郷は本当につまらない村で、どいつもこいつもそれなりに上手くやっていたということ

    つまり、俺が証明したいのは中身ではなく 俺が俺の意思でお前に命を預けるということ 敗れた者も矜持くらいは守らなければ、次に進めまい
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    komaki_etc

    DOODLE天使の漣
    天使 平日の十四時のカフェなんて、人気のないものだ。タケルとの待ち合わせまで、時間つぶしに入っただけの漣にとって、それは都合のいいことだった。どこかの日陰でやり過ごすには暑すぎる日だった。
     心地いい雑音と、ゆったり氷の融けていくアイスティー。机の上に溜まっていく水滴を尻目に、背中の違和感が増す。漣は何度も姿勢を変えながら、じんわりと広がる痛みに眉根を顰めた。普段ならしまっているはずの羽が、窮屈そうに頭を出す。
     自身が天使であることは、タケルには隠していなかった。満月の夜にしか姿は変わらないし、日常生活に支障はない。ただ、こうして時々、背中が痛むのだ。早く人間の殻から解放されたいというように。
     人間でありつづけることを選んだのは漣自身だった。天使の母親と人間の父親の間に生まれ、父と共に暮らすことになったその時に、その運命は決められた。強い存在であることを望まれながら、人知の及ばない力が身体を襲う時、自分の存在意義がわからなくなる。漣にとって、満月とは煩わしいものだった。一種の呪いに、血を恨む。顔も知らない母親は、どうして父となど交わったのだろう。堕天する気もなかったくせに。
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