「まるで、魔法だ」
呆れ半分、賛嘆半分の常闇の呟きに、隣の師は「なにがだい?」と視線を合わせてきた。
ホークスと常闇を神輿のごとく担ぎ上げるファンの第二波からようよう解放されて、二人は空港内をぶらついていた。今度はきっちり説得してのお別れなので、第三波の心配はない。最初からそうすれば良かっただろうに、とは常闇も思うのだが、用意周到なはずの彼の師が、優先度を落とした事象に対して顎の外れる雑さを披露するのは、今に始まったことではないのだ。あるいは、エンデヴァーたちの搭乗に間に合わせることを優先したのかもしれないし……第一波のとき、黒影による目眩ましを指示してきた楽しげな目配せを思い出すに、どうもこのお祭り騒ぎを面白がっていたのではないか、という疑惑も捨てきれない。
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