またね 軟口蓋を上げる、ということを、レッスンで何度も指摘されてしまった。欠伸をすると上がるでしょ、と言われるたびに欠伸をしていたから、疲れていないのに眠くなった気がする。
「お疲れさまでした。お先に失礼します」
「お疲れ様。しゅーくん、用事でもあるの? 嬉しそう」
ボイトレは、ダンスとは違う疲れ方をする。リラックスをしなければならない、という緊張をずっとしているからかもしれない。それでも隣で汗を拭くしゅーくんはピンピンとしていて元気そうだった。
「はい、このあと恭二さんたちとゲームするんで」
「わあ、それは楽しみだね。いってらっしゃい」
しゅーくんを見送って、さて、と僕は隣を見る。えーしんくんは淡々と帰り支度をしていて、その寡黙さはどこか上の空っぽかった。
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