Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    hydroxideion010

    DONEチョコレートと鋭百
    【鋭百】チョコレート・ジェネシス 真っ赤な果実がプリントされた箱の中からは、十粒ほどの艶やかなチョコレートが顔を覗かせた。その中の一粒がつままれて、口の中へ放り込まれる。こり、とチョコレートを頬張った百々人は口元を綻ばせた。
    「美味いか」
    「うん、すごく美味しい」
     こちらに顔を向け、とろん、と目尻を下げて微笑む百々人に自然とこちらも頬が緩んでしまう。ほんのりと爽やかな甘い香りがして、友人から貰ったという珍しいチョコレートはなるほど確かに美味しそうだ。
    「マユミくんも食べる」
     そんなに物欲しそうにしていただろうか。一瞬己の行動を省みたが、一人じゃ食べきれないから、と言われてしまえば断る理由もない。
    「いいのか」
    「もちろん」
     百々人はそう言ってもう一度箱に手を伸ばし、一粒チョコレートをつまみ上げる。てっきり箱ごと差し出されると思っていたから、その一粒は百々人の口の中へと運ばれていくのだろうと思った。しかし百々人はそのまま自分の顔の前に手を持ち上げて動きを止めた。どうするのだろうかと眺めていたが、動く気配はない。意図を図りかねて顔を見ると、小首を傾げてこちらを見つめ返してきた。
    1205