4.ふたりぼっちイルミネーション 共に過ごせる久々の休暇をどのようにして過ごすことが最適かは、おそらく未だ解明されていない問題の一つだろう。いよいよ明日に休暇を控え大量の仕事を終わらせて。互い、夕飯さえ別々に摂りあった上で僅かな時間を惜しむようオフィスの下まで迎えに来たクザンのことを、おれは苦しいほど可愛らしいと思ってしまう。面倒見がいいのだろう。それはガープから聞くクザンの、署内(今は庁内だが)での話を聞くだけでわかる。自分は面倒だからと部下に仕事を割り振る態度のくせに、それは後進育成のための援助であったり。かつては海軍大将であったために彼を師と仰ぐ者もいれば、相見え(その頃には〝元〟海軍大将であったが)た時には瀕死のスモーカーを庇うような素振りもあった。おれが思うクザンの美点であり悪癖である〝飄々とした態度〟のせいでそう見られることは少ないが、クザンという男は基本的に熱い正義を持った男なのだ。これがクザンの気紛れで続いている関係であることはわかっている。それでも、こうしてこの男に甘やかされるたび、凝り固まった自分の世界が少しだけ、色付いてさえ見えるのだ。ヴェルゴともトレーボルとも、ガープとも、それから——センゴクや、ツルとも違う愛の形を、この男はおれに教えてくれる。教えてしまった。知ってしまった。寒い時期のせいだろうか。クザンが軽く上げた手に、鼻の奥がつんと痛む。セクシーな唇がにぃ、とだらしなく歪む姿に、らしくもなくゾクゾクする。たまらなかった。まだオフィスの中で、ここではスマイル・カンパニーの代表として振る舞わねばならぬ場所であるはずだと理解しているのに。ひと気のない夜のオフィスが。〝あとは片付けておくから〟と背を押すヴェルゴが。〝いい休暇を過ごせよ〟と笑ったトレーボルが。かつては王であれと、そうすればもう誰も何も取りこぼさず強く生きていけると教えてくれた二人が、今は幸せたれと教えてくれる。コートを掴み、急く足が駆け出すのも構わず、クザンの元へ向かう。
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