Honey何故だか、目が離せなかった。
いつもと変わらぬはずなのに、ほんの少しきらりとしているような、艶やかに見えたせいか。
「杏寿郎、おはよう!」
「先生をつけなさい。それからおはようございますだろう?」
といつも通りだったのだ。
目に入るまでは。
彼の、猗窩座の唇が。
その瞬間に胸がどくっと脈打った。
見てはならないのに、目が離せないような不可思議な感覚は何故だか気恥ずかしいような気もして。
有り体にいえば、欲を感じてしまったのだ。
前世では宿敵である鬼、今は自分の生徒となった猗窩座に。
「杏寿郎?」
「……」
「おーい、どうかしたのか?」
「っ!……いや、なんでもない。
ちょっとしなければならないことを思い出しただけだ」
「そうか。じゃあ俺は行く。
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