食いちぎる前に その棒状のアイスは桃味だとかで、薄いピンク色をしていた。杏寿郎は、それをゆっくり袋から開ける。そのとき長めの髪が邪魔だったので、右手で横の髪を耳にかけた。
夏の暑さで少し、溶け出しているそれは、重力に従って、垂れた汁をアイスの下から舐め上げる。舌は、わざといつもより出して見せた。
つつ、と先端で撫でるように舐めていく。桃の味は正直あんまりしなくて、いかにも人工甘味料の味がした。でもとりあえず、冷たいから美味しい。あとは大きく口をあけて、ぱくっ、と勢いよくかぶりついてみた。先っぽから舌を使って、食べやすいように溶かしていく。じゅる、と音がした。唾液が伝いそうになったから、一度口から離して、口元を拭った。その際に、目の前にいるだいぶ歳下の恋人の顔を見る。
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