おなご中心の創作【1】石化した魔女と元◯◯【設定】
マルメロ・クインス
ある町の路地裏の古家で魔法薬屋を営む。
32年生きてる25歳。元ソーサラー。
22歳のとき、ギルドの仲間たちと共に冒険中、バジリスクに襲われてパーティが半壊。
各自散り散りに逃げ延びるなか、ひとりだけ石化してしまった。
石化の直前に掛けていた防御魔法のおかげで風化と破壊は防げたが、石化した場所がバジリスクの領域ということもあり、誰にも発見されずに取り残されてしまった。
それから7年後、蔦と苔に埋もれていたところを一人の女剣士によって救出され、無事に石化解除される。
かつての仲間は殆どが街から離れてしまっており、充分すぎるほどに冒険がトラウマになったため、冒険者を引退して薬屋に転身した。
石化を解除してくれたり、薬屋を開業する際に様々な面で助けてくれた女剣士には感謝してもしきれない。そして開業から3年経った今でも助けてもらってばかりなので女剣士には本当に頭があがらない。
彼女のお店には石化防止の御守りが売っている。本人の経験を生かしたとてもレアな一品。
「石化対策はしましたか?しないと後悔しますよ?私みたいになっても知りませんよ?」「からかわないで下さい…恥ずかしいです…」
エルドベル・フラガリア
職業は剣士。ぴちぴちの20歳。
どこからか突然現れ、冒険者の期待の星と言われた天才剣士。
文字通りなんでも出来るため、様々なパーティのお助け剣士としてギルドを転々としていた。
容姿端麗、爽やかで強くてなんでもできる。世が世なら勇者だったかもしれないほどの実力の持ち主。
なのだが、実は超がつくほどの女好き。
行く先々であらゆる女性に甘い言葉を囁いては一度限りの甘い夜を過ごしていた。固定のパーティを組まずに転々とする理由は本人曰く「運命の相手を探してるから」大人のお姉さまから幼さの残る少女まで、多く女性冒険者の心を奪っていたとかいないとか。
数年前、ひとりでバジリスク討伐に向かった際に蔦に覆われて埋もれていたマルメロを発見し、一目惚れ。即座にバジリスクを討伐し、マルメロの石化を解除してマルメロの命の恩人となった。
苦悶の表情で石化していたマルメロに劣情を抱き、石化を解除する前にやらしく撫で回したりしたのは内緒。“この人を私の物にしたい”という下心のもと、ひとりきりになってしまったマルメロに寄り添い、薬屋開業に至るまであらゆることに協力した。
数年たった今は冒険者を続けながらもマルメロの薬屋に居着くようになり、薬屋を手伝いながらマルメロに甘い言葉を囁いて撫でくりまわしたりして過ごしている。
(本当は魔王と取引して世界を救う責務から逃げ出した異世界の勇者。)
*
「ねぇ、私と取引きしない?」
「何…?」
「私をここじゃない別の、全く別の世界に追放して。それだけでいい。この取引きに応じてくれたら、この聖剣も聖盾も、私に宿ったチカラも、全部貴方にあげるしその傷も治してあげる。」
「ゴホッ…実に魅力的な提案だ。それがこの世界にとってどのような意味を持つのか理解しているのか?」
「さぁ?滅ぶんじゃない?滅ぼすかはあなた次第だけど、わたしには関係なくなる。」
「貴様はそうまでして、この世界からの解放を望むと。」
「うん。私気付いちゃったの、この世界は貴方を倒しても平和にならないなーって。ねぇ…そろそろ答えを聞いていい?どうする?取引き。する?しない?」
「…命乞いをするようで癪だが、良いだろう。この世界から放り出してやろう、勇者よ。」
「賢明な判断をありがとう、魔王。」
*
「っていう!やりとりがあったんですよ〜ははは!」
「はははははっ!お前の強さならそれくらいは出来るだろうなぁ!」
「エルドベルの話はいつも面白いなぁ!」
「で、その後はどうなったってんだ?」
「この後?そうだなぁ〜?無事に私はこの世界にやってきて、実はそこのマスターがその時の魔王でした!なんて!」
「「ははははははははっ!!」」
「…そろそろ店じまいですよ。」
「あぁ、ごめんごめん、さ!みんなお開きだ!明日も死なずに頑張ろー!」
*
「はははっ…あーあ、おっかしー…」
「人の無様なエピソードを随分と愉しそうに話すではないか。」
「怒らないでよ、誰も信じちゃいないから!」
「ふん…」
「あーあ…楽しいなぁ普通の生活!ねえねえ、もう一杯貰っていい?」
「店じまいだと言っただろう。」
「なんだよ〜けち〜!魔王〜!」
「…迎えが来たぞ」
「んぇ?…ああ!マルメロ!」
*
『なんで貴方がこっちに来てるの!?あのままあっちにいれば好き勝手出来ただろうに…!』
『勝手に滅ぶ世界など最早興味はない。世界を捨てた勇者がどのような道を辿るのか、その行く末を眺めていた方が愉快というものだ。』
『えー…なにそれ…予想外だなぁ…生きづらい…』
『干渉はせぬ。存分に己の欲望に身を任せて堕落するがいい。』
『それは余生を楽しめって応援として捉えていい?ありがと。』
『さぁ行け、愚かな人間よ。』