竜王と和解する世界線を考える。*
「勇者さま…いえ、今はアレフさまと呼ばせてください。」
「アレフさま、これからローラは…ひとりごとを言います。ラダトームの王女としてではなく、ひとりのローラという娘として…。」
「かつて竜は世界を守る存在だったと、古い書物に書いてありました。」
「竜の王とまで呼ばれる竜が何故ひとに仇なす存在になってしまったのか…その理由は私には分かりませんが…」
「もしも…もしも意思を交わすことが出来るなら、和解する事が出来るのではと、そんな夢のような事を願わずにはいられないのです。」
「どうかご武運を、アレフさま。」
*
「世界の半分などいらない。そもそも世界はお前のものではない。」
「だが竜の王よ、私はお前と取引がしたい。」
『ほう、取引。このわしにお前から取引を持ちかけるというのか。』
「私の目的はこの世界に光を取り戻すこと。…光の玉さえあれば、お前を殺さずとも成すことが出来る。」
「どうか世界に光を返してくれないか。」
『…わはははは!思わず笑ってしまったわい』
『このわしをたおすことが出来ると考えているのか?』
『そういうことは勝ってから言うものだ…おろかものめ』
『我が力、思い知るがよい!』
「では、戦いの後にまた問おう。…竜王、覚悟!」
*
「竜の王よ…今一度、話を聞け」
『…』
「…私はお前を殺したくはない。」
『……』
「竜はかつて世界を守る存在だったと…そう、きいた。竜の王たるお前は、恐らく、この世界に必要なのだろう…。」
『……』
「聞いてるのか…お前、本当にしんでしまうぞ…あぁ、言葉を考えるのが面倒だ…くそ…っ…」
「おい、竜王…とっとと光の玉を…寄越せ!」
*
『…あの時は流石に死んだと思ったんだがの。まさかわしにザオラルをかけるとは驚いた。』
「あの時のあれはザオラルだったのか?私はそのような呪文を会得した覚えはなかったんだが…ベホイミのつもりだったから…ではあれはベホマだったのか?」
『ザオラルでもベホマでもどっちでもよいわい。』
『そなたも満身創痍だったというのに、わしの回復などして殺されるとは思わなかったのか?』
「気高き竜の王が汚い手を使うとは微塵も考えていなかった。…ということにしておいてくれ。」
『何も考えていなかったのか、このお人好しめ。わしに少しばかり残っていた良心に感謝するんだな。』
『言っておくが、そなたに光の玉を渡したのはわしと同じくらい強いそなたの顔を立ててやっただけのこと。…ああ、それにしても、寄越せ!など勇者にあるまじき言動だったのう、まるで盗賊の類ではないか。』
「う…こちらも必死だったんだ。さっさと玉を返していればそんなことを言うつもりはなかった。」
『さて、どうだかの。ロトの血筋に盗賊の血でも混じっていたのではないか?』
「そんなわけないだろう!…多分。」
『世界は光で満ちてしまった。光のあるところに闇は生まれる。いずれまた世界を脅かす闇が生まれ出るだろう。…わしのひ孫くらいの時代にの。』
「ならば、それに備えて人は強くならねばならない。…人と人が助け合う、豊かな国を作らなければ。」
この世界線の勇者
・おひとよし。人の善性を信じている。
・絶対に竜王を倒せるという傲慢(実際倒せる)
・人間が世界を治めるのは当然だと考えている
・手癖が悪い。先祖に盗賊がいるかもしれない。
・和解後、竜王に度々会いに行く。人の世は退屈なので。
この世界線の竜王
・世界を治めるのは人間ではなく、竜の王たる自分
・役割としては世界を守る竜であるはずが竜王城の土地のせいでおかしくなってしまった
・世界を闇で閉ざしたのは世界のため。
・「薄暗い程度がちょうどいいだろうに」
・最近ひ孫が生まれた。
・和解後、勇者と度々茶をしばく。勇者もしばく。