わたしの法典/寛解 愛には愛を返さなくてはならないし、愛されたのならそれ相応にならなくてはならない。愛とは尊いものであり、すべからく尊重すべきものなのだから。
「だからと言って、他人からの愛も希望も願いも、何もかも全て背負おうとする必要は無いはずだ。はっきり言うが、おまえは馬鹿だ」
じとりと彼の目がこちらを見ている。極力露出を避けた彼の格好はどこか自分に似ているような気がした。
彷徨海、カルデアの医務室。白の天井が眩しい中で黒点のように黒く白い医師、アスクレピオスがアルジュナを見下ろしている。
「ええ。ですが、これは変えられないのです。私が『アルジュナ』であるために」
ゆるゆると自分に見えるように腕を上げる。見慣れた自分の手が見え、仮初であっても生きているのだと確信する。
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