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    ぽてぃ

    @pothy_helios_01

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    POIPOI 12

    ぽてぃ

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    前にイベントで出した花吐き病をテーマにしたお話しの後日談的なお話し

    その時の設定みたいなのがちょろっとありますが、読んでいなくてもこれだけで多分読めると思います

    ウィルアキ

    「よ、ん? あっ!」
     バサバサバサッ
    「あちゃー…」
    「ちょっとなんの音?」
     隣の部屋から音に驚いた様子のウィルがこちらの部屋までやってくる。やべ、見られたらお小言言われちまう。
    「あ、わりぃ…横になりながら横着して雑誌取ろーと思ったら崩しちまった」
    「もう、だからいつも言ってるのにちゃんと片付けないからこうなるんだろ」
    「ぐ、ぅ」
     やっぱりお小言を言われてしまった。
    「仕方ない、片付け手伝ってやるから」
    「いい、いいって自分でやるから」
    「そんなこと言って片付けた試しないだろ」
    「うっ…」
     崩して床に落ちた雑誌をウィルは拾う。
    「ここだけじゃなくて、そっちも散らかってるな」
     他の場所にも乱雑に積まれた雑誌にウィルは視線を向ける。
    「この際、いらない雑誌は捨てたら?」
    「は? 全部いるんだって」
     このままだと雑誌を全部捨てられるかもしれない
    「じゃあ、キチンと片付けること」
    「わーったよ」
     出しっぱなしにしていた雑誌を本棚へと片付けていく。

    「はい、これもこっちに片付けるの?」
    「ありがとな、これもこっちで…」
    「どうせならナンバーごとに並べたら? その方が読みたいときに探しやすくなるよ?」
     本棚にしまえたらいいやと思ってその辺りはあまり気にしてなかったけど、言われた通りにナンバーごとに入れ替えようと既に本棚にあった一冊の雑誌を取り出す。
    「あ、それ」
     取り出した雑誌を見てウィルがポツリと呟く。
    「どした?」
    「前に一緒にインタビュー受けた特集が載ってるやつだ、懐かしいな」
    「あ、あ〜、アレな」
     雑誌の表紙に載っているいくつかの特集のタイトルの一つ、それをウィルが読みあげる。
    『奇跡さえも嫉妬する運命の出逢い』
     パラパラとページを捲ってオレたちのインタビューが載っているところに目を通す。
     オレたちにとっての運命の出逢いとかなんとかが掲載されている。
    「あ、確かこんな内容だったな。オレらが出逢ったのって母の日だもんな」
    「うん、そうだね。あ、その母の日なんだけど」
    「ん?」
    「日にちが近付くにつれて実家忙しくなるから、俺も極力手伝いにいこうと思ってるんだけど」
    「毎年恒例の、だよな。オレも手伝うから声かけろよ」
    「いつもありがとうね。そうそう今年はカーネーション、いつもより種類も色も取り揃えるんだって」
    「へぇー」
    「色とりどりのってことは、…大切なあの色もあるかも」
    「…そうだな」
     オレとウィルにとって大切な花、それに思いを馳せる。
     ウィルも同じなのだろうか? 少しだけ片付けの手を止めて静かな空気が流れていく。

    「あ、片付け続きしようか」
    「ん? 手止まったしここで片付け終わるんかと思ってた」
    「もう、そんなわけないでしょ」
     片付けを再開するため、開いていたページを閉じ、表紙に載っているそのタイトルに視線を落とす。
    「てかさ、やっぱりこれ何回見ても聞いても仰々しいタイトルだよな」
     大げさだよなーと思いながら、苦笑まじりにウィルに話しかける。
    「そんなことないと思うけど…だって」
    「ん?」
    「アキラと出逢えたのは運命だって、俺は思ってるから」
     そう言ったウィルとの視線が合う。
    「奇跡さえも嫉妬してくれたら、嬉しいんだけどな…」
     その視線が少し熱っぽく感じる。そう思っていたら頬に手を添えられ、それからゆっくりと顔が近付く。
    「っ」
     オレは思わず手に持ったままの雑誌をお互いの顔の間に割り込ませてしまう。
    「んぇ?」
     あ、これは雑誌に唇ぶつかったな
    「あ、アキラ?」
     頬に添えられていた手が離れ、その手で雑誌を下に降ろされていく。
    「…急にウィルがそんな風に見てきたから、雑誌にちゅーさせたのは悪かったけど」
    「…俺こそ、ちょっと気持ち昂っちゃったみたいだ…、イヤだった…?」
    「イヤじゃねーけど、ちょっと気持ち追い付かなかっただけだから」
    「良かった…」
    「ってか、片付けしろって言ったの、ウィルお前だろ?」
    「う、うん。そうだね、片付けしよっか」
     さっきの、少し悪いことしちまったかなと思いながら残りの散らかった雑誌も片付けていく。それから
    「運命、…か」
     と小さく呟く。
    「アキラ、これはどこに片付けるの? って何か言った?」
    「いんや、なんにも言ってねーよ、それは」


    数日後
     案の定、ウィルの実家の花屋が忙しくなり始め今日はオレも手伝いに来ていた。
    「アキラ、ごめんな。俺は父さんと配達回ってくるよ」
    「気にすんなって、おばさんに重いものとか持たせれねーだろ? 力仕事は任せとけ!」
     ぐっ、と力こぶを作ってみせる。
    「あはは、頼もしいな。それじゃあ配達行ってくるね」
    「おう! いってらー」

    「おばさん、外のもの片付け終わったぜ」
     店内で作業をしていたウィルの母親に声をかける。
    「アキラくん、ありがとう。ちょうどお客さんも少ない時間だから休憩入ってもらって大丈夫よ」
    「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらって…」
     オレは店内に並べられている花々をキョロキョロと見回す。
    「アキラくん? どうかしたかしら?」
    「あ、えっと、おばさんにちょっと頼みたいことあって」
    「あら〜? アキラくんの頼みごとだったら、おばさんなんでも聞いちゃうわよ」
     ウィルと良く似た、人好きのする笑顔でそう言われる。
    「なんでもって、たいしたものじゃねーんだけど、オレのお袋のためにカーネーションを頼みてぇのと、それと──」


    母の日当日
     この日は前もってウィルは実家を手伝うため仕事は休みを取り、もちろんオレも手伝う気満々だったから、同じように休みを取っていた。
     朝から大忙しだ。開店と同時に途切れることなく母親に渡すためのカーネーションを買いに沢山の客が訪れる。
     一生懸命貯めたお小遣いでママにカーネーションを買いに来たんだ。と教えてくれたガキンチョ、あの人は社会人になって初めて自分で稼いだお給料で買って母親に渡すんです。ってそう教えてくれたんだよ。ってウィルが言ってた。
     子供も大人もいっぱい来るから大変だけど、訪れる人達の表情はみんな凄く嬉しそうだ。

     そんなこんなであっという間に夕方で
     客足も落ち着き、後はおばさんたちだけで大丈夫だと伝えられ、オレとウィルはタワーに戻る帰り支度をはじめる。
    「お疲れ様。今日は本当にありがとう」
    「礼なんていいって、オレが好きで手伝ってんだし」
    「うん、でもちゃんとお礼言いたかったから。…それじゃあ戻ろうか」
    「あ、それなんだけどさ。先に戻っててくんねぇ? 実家に寄ろうと思ってるから」
    「あ、うん。分かった。タワーに戻るの遅くなりそうだったら連絡ちょうだいね」
     店先でウィルが先にタワーへ帰るのを見送ると、オレは店内へと戻りウィルの母親へと声をかける。
    「おばさん、用意して貰ってたカーネーション引取りたいんだけど」
    「はいはい、すぐ持ってくるわね」
     一つはお袋に渡すカーネーション、それともう一つ…
    「お母さんに渡すカーネーションももちろんだけど、ふふ、こっちのもいっとう綺麗なの用意したわよ」
     とニコニコと笑顔で、だけど少し含みがありそうな感じでそう言われる。
    「えっ …っ、あ、ありがと」
     おばさんは何か色々察しているのかも知れねーな……

     実家に戻り母親に感謝の気持ちを伝えてカーネーションを渡す。すっげぇ喜んでくれて安心した。せっかくだからと、夕食を一緒にとなりちょっと遅くなりそうだからウィルに連絡入れるって話したら、あの子は相変わらずなのねと笑っていた。ほんとうにな。
     夕食を済ませ、少し話し込んでから時計を見れば二十時過ぎ。また近いうちに顔を出すからと伝えて実家を後にする。
    「ただいまー」
     タワーに着きチームの部屋に戻る。
    「あれ? ウィルいねーのか?」
     てっきりおかえりと挨拶が返ってくるものだと思っていたら、先に戻って来ているはずのウィルの姿が見えない。
    「どこ行ったんだ?」
     ………
     手に持っていた、ウィルの母親から引き取ったもう一つのもの、それをじっと見る。
     帰ってきてそのままの勢いで渡すつもりだったから、すぐに渡せないと分かって何故だか少し緊張してしまう。それを自分のベッドの枕元に隠すように置く。

    「…戻ってこねぇな」
     そう思っていたらあの雑誌を並べた本棚が視界に入る。
     その本棚に手を伸ばして雑誌を取り出そうと思った瞬間、シュンと扉の開く音がする。
     大きな音ではないのにビクッと大げさに驚いてしまう。
    「うわっ」
    「あれ? アキラ帰って来てたの?」
    「お、おう。ちょっと前にな」
    「そっか、おかえり」
    「ただいまってお前どこ行ってたんだ?」
    「えっと、実家に戻ってて…」
    「え? なんで?」
     ウィルは先にここに戻って来たはずなのに何でまた実家に戻ってたんだ?
    「なんで? って不思議そうな顔してる」
    「あー…忘れもんしたとか?」
    「ううん、違うよ。これを取りに行ってたんだ」
     ウィルは手に持っていた紙袋をオレに見えるように掲げる。
    「紙袋?」
    「ちょっとここに置かせてね」
     オレのベッドの端の方にその紙袋を置く。その紙袋から赤いリボンでラッピングされた箱を取り出す。
    「アキラ」
    「ん?」
    「これをアキラに渡したくて」
    「オレに?」
    「うん。開けてみて」
     オレへと渡された箱のリボンを解き、ゆっくりと箱を開け中のものを取り出す。
     取り出したものは花籠、その中には
    「これ…」
     カーネーションをメインに他の花々が飾られている。その中でもカーネーションはオレンジ色で…
    「今日、渡したいなって思って…用意してたんだ」
    「……」
    「実家に居たとき、アキラとずっと一緒だったから持ち出せるタイミングがなくて、それで戻ってたんだけど…もしかしていらなかった…?」
    「え? いや、いる…! …ありがとな」
    「うん。気に入って貰えるといいんだけど」
    「大事にする。………あのさ」
     貰った花籠の花をオレは目を細め、嬉しいなと思いながら見たあとその視線をウィルの方へと移す。
    「どうしたの?」
     花籠を一度本棚の上に置き、それから枕元に隠したものを取り出す。
    「オレもさ、これ…ウィルに渡そうと思って用意してた」
     ウィルに手渡したものはオレンジ色のカーネーションの小さなブーケ
    「アキラから、俺に…?」
    「…ん、受け取ってくれるか?」
    「もちろんだよ…! 嬉しい…ありがとう」
     満面の笑みを浮かべるウィルを見て、受け取って貰えて良かったと安堵する。
    「けどさ、これこっそり用意してたのにお前も同じこと思ってたし、先に渡されちまうし…」
     本棚の上に置いたウィルから貰った花籠に視線をチラリと向ける。
    「こっそり…ああ、だからか」
    「うん?」
    「取りに戻った時に母さんがさ、こういう表現どうなのかなとも思うけどニヤニヤしてる感じだったんだよな…」
    「あーオレが引き取ったときもやたらニコニコしてたな…」
     二人が同じタイミングで同じ花を用意していることに、あの人はやっぱり色々察しているんだろうなって思った。

    「でもさ、アキラがこうやって用意してくれたのちょっとだけ意外だったかも」
    「ん? あ、そーだよな。別に今日この日に渡そうって思ってたわけじゃねーしな」
    「じゃあ、どうして?」
     ウィルは首を傾げ不思議そうにオレのことを見る。
    「あー…ちょっと前に雑誌の片付けしたことあったろ?」
    「ん? ああ、あの時の」
    「その時にさ…あの雑誌見て、カーネーションの話しも出たろ? この色のカーネーションもあんのかなって」
     貰った花籠の中のカーネーションに優しく触れる。
    「うん…」
    「…まぁ、思い入れのあるやつだし、あったらいいなって」
    「そっか」
    「…でもさ、それだけでお前に渡そうかなってその時には別に思ってなかったんだけど」
    「え? そうなの?」
    「そのあと雑誌のさ、タイトルの…お前がオレと出逢えたのは運命だって…」
    「……」
    「やっぱり大げさだよな、とは思うんだけど。ガキだった頃にこの色のカーネーションを貰って、それから…オレが少し前にあの病気に罹っちまって、片想いだってずっと思ってたから気持ちを言うつもりなんてなかった。でも、罹ったからこそ、そうじゃなかったんだって。病気にならなかったらずっと想うだけにして言うことはなかったと思うからな」
    「……っ」
    「『花吐き病』になったのが、運命? …罹っちまったのが運命って言うのちょっと変だとは思うけど、オレは前に話してた時にそうなんかなって思った。んで、この花がオレたちのこと、繋いでくれたんだよなって…」
    「アキラ……」
    「んで、オレはいつも貰ってばっかでウィルにあげたことなかったなって」
    「それで、こうやって用意してくれたってこと?」
    「そーいうことだ」
    「嬉しい、ありがとう…大切にするよ」
     オレが渡したブーケをウィルは愛おしそうに眺める。
     そんなウィルを見て渡して良かったと。だけどいつまでも眺めているから、次第にそんな風に見ているカーネーションにオレは…
    「ウィル」
    「ん? え? アキ…っ」
     ブーケをウィルの手から取り上げ、ブーケを持っていない方の手で腕をグイ、と掴んで自分の方に引き寄せる。近くなった距離を更に詰めてオレは少しだけ背伸びして、軽く触れるだけの口付けをする。
    「ど、どうしたの?」
     急に口付けられたウィルは驚いた表情をしている。そりゃそうだろうな。
    「…お前がこればっか見てるから。オレは奇跡なんかより花に嫉妬しちまった、かも…」
     取り上げたブーケにチラリと視線を向ける。
    「え? それでヤキモチ妬いちゃったから、キスしたの?」
    「う、…そうだ」
     自分の行動をそう言葉にされると恥ずかしくなってしまい頬が熱くなるのを感じる。
    「ふふっ」
    「わ、笑うなよ」
    「ごめんごめん、かわいいなって」
    「っ、かわいくなんかねーだろ…花にヤキモチ妬くなんて」
    「アキラ」
    「なんだ…?」
     手に持っていたブーケを取り返され、そのブーケは本棚の上に置いていた花籠の横に並べられる。
     今度はウィルがオレのことをグイ、と引き寄せるとそのままベッドへと倒れ込んで、オレはウィルにのしかかるような体勢になってしまう。
    「え? おわっ あ、あぶねーだろ…」
    「大丈夫だよ。アキラがケガしないよう、危なくならないようにしたから」
    「そーいう問題じゃ…ってか、乗っかってたら重いよな」
     のしかかった状態から離れようとしたら腰に手を回され、そのままクルリと体勢を逆にされてしまう。さっきまで見下ろしていたのに今はウィルを見上げている。
    「アキラは俺が花をずっと見てたから、嫉妬したんだろ?」
    「そうだ、ってさっき言った」
     なんでそれをまた聞いてくるんだ、恥ずかしいだろ。
    「じゃあ、今からは嫉妬も出来ないくらいアキラのこと見てあげる」
     ウィルの手がオレの腰をするり、と撫でる。
    「…ッ、出来ねぇくらいオレのこと、ずっと見てろよ」
     言葉の意味と、触れられたことの意味を察して両腕をウィルの首元に回しながらオレはそう答えた。
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