花咲きおしゅぐ二人で自然の中を歩くのが好きだった。
ハルトの住むコサジからはいつだって海が臨めたし、母は野菜や花を育てていたので家はいつでも華やかだった。
スグリの住むキタカミは、パルデアでは見たことのないような、人の手がほとんどつけられていないありのままの自然が広がっていた。
柔らかに流れる風が、そこにいるだけで緑の香りを運ぶ。
満開にほころぶ桜の花を、いつかスグリはハルトのようだと形容し笑った。
そっと触れ合う手を、これから先も隣で握り続けていたいなんて、幼心の中に”早く大人になりたい”と熱を灯していたハルトは、スグリのその言葉をむず痒く聞いていたものの、春風の運ぶ花びらの中に浮かぶ笑みがあまりに温かく優しくて。
花に例えられるほど可愛い少年ではないと言い返すのも忘れて微笑みを返す。
5270