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    5inferno11

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    5inferno11

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    アイ光 / 種族設定・ネタバレなし。

    #FF14
    #アイ光
    aye-optical
    #アイ光︎︎♀

    ティースプーンで好きなだけ 視線を泳がせる。その目はアイメリク本人に到底向けられるものではなく、彼の持つ本に対してもそれは同様であった。表紙からも背表紙からも、嫌というほどタイトルがはみ出している。どうして買ったときにブックカバーを貰わなかったのかと過去の自分を恨んだ。
     閉じられていた本はアイメリクの手によって開かれ、ぱらぱらと飛ばし読みでページを捲る。彼は聡明である。短時間でも少し頭に入れれば内容を把握できるのであろう。互いに無言を貫くその間も紙の擦れる音だけが響いた。
    「なるほど」
     先に沈黙を破ったのはアイメリクのほうだった。どこか力強く閉じられた本は、私の手元へと返される。タイトルはこうだ。───『旦那様の淫靡な夜』。
     ずっしりと重みを感じたそれを隠すように持つと、恐る恐る彼を見上げた。
    「とある男女を描いた作品のようだな。互いのすれ違う様子が実に読んでいて心踊らされた」
    「…………」
    「して英雄殿。これはどこで?」
    「おすすめを数冊手渡されて、ろくに中身を見ずに買っちゃったんだよ。興味があったわけじゃない」
     きみとご無沙汰なわけでもないし、と心の中で呟いた。いや、言うべきだったのだろうか。傍から見れば欲求不満で読んでいたようにしか思えないというのに。
    「そのような知識は私伝いで学んでいると思い込んでいたからな。少し意外だったんだ」
    「きみ……私をいくつだと思ってるんだ」
    「今年で」
    「あー、いい。……とにかく、これは私の意思で買ったものじゃあない。それだけは……」
     するり、と頬を手が撫でる。気づいたときには既に遅く、唇が重ねられていた。分厚い舌がゆっくりと私の舌と絡み合い、堪能する。私の持っていた本が落ちたのを気にもせずアイメリクはキスを続ける。時折私が呼吸できるように隙間を作ってやることも忘れずに。
    「作中ではキスの描写はあまりなかっただろう。これは私が教えてやれる」
    「な…………」
    「君に与えられるものは、何も一匙で十分だ。他に必要ない」
     呆然と話を聞いていれば、アイメリクが落ちた本を拾い上げ、軽く埃を払った。何事も無かったかのようにそれを私に手渡すと、その唇は弧を描いた。
    「それとも、まだ必要が?」
     意地悪な質問を耳に、再び呆然とする。はっと我に返り口の端の唾液を拭うと、彼の様子を伺う。その瞳には、独占欲で満たされた色が浮かんでいた。
    「……少しね」
     そんなの、世話を焼いてやるほかないじゃないか。
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