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    dada8779

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    dada8779

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    だるまさんの導入部分です

    #ドラ武
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    タイトル未定 ぬらぬらと。
     リノリウムの床をべったりと濡らした跡が這う。

     ずるり、べた。ずるり、べた。
     ホラーじみた音を立てて這うのは、辮髪の大男だ。
     脂汗で全身を濡らしながら、腹から流れる血をそのままに、常夜灯の幽かな明かりを頼りに床を這う。
     ぜえぜえと息を切らしながら、歯を食いしばり文字通り汗血かんけつを流しながら這いずっている。今にも気絶しそうな意識を、歯を食いしばって、撃ち抜かれたばかりの腹の痛みで、どうにか引き上げて這っている。
     そうまでして、一体どこへ行こうというのか。

     昼間、同僚である乾に聞かされた話が原因だ。

    「タケミっちが……?」
    「ああ。マイキーにやられたらしい。相当な重傷だ。死者も出たらしいが、花垣は無事だ」

     動けるようになったら、見舞ってやるといい。
     そういって乾は帰っていった。
     それはそうだ。よりにもよって平和ボケを極めたこの日本社会で、龍宮寺は銃で撃たれた。3発もだ。それでも生き残ることができたのは運がよかったと言うほかにない。
     場所がテーマパークで人が大勢いたこと。前月に行われた国際会議に伴い銃や爆弾によるテロを想定した訓練が行われていたこと。それにより適切な応急処置が受けられたこと。
     他にもいろいろと幸運が重なったことはあるが、それでもどうにか龍宮寺は銃傷を受けながらも生き残った。
     そして聞かされたのが、花垣の入院だ。
     すぐにでも顔が見たかったが、まだ花垣の意識が戻っていないのと、銃傷を受けて1週間も経っていない龍宮寺を動かすことはできないと言って断られた。
     そういうわけで、龍宮寺は夜間見回りの看護師の目を盗んでどうにか花垣の病室を目指しているというわけだ。

     這いずってたどり着いた病室で最初に目についたのは、ベッドの横に置かれた機械から伸びる管だった。床からだと見えづらいが、それが呼吸器だろうことはすぐにわかった。
     一拍後に電子音が耳に入ってくる。心拍をとらえる心電計の音だ。ピッ、ピッ、と安定して聞こえてくる音が花垣が生きていることを、それでも心電計が必要な症状であることを伝えてくる。
     床を這ってどうにか体をベッドの上へと引き上げると、まず目に入ったのはやはり呼吸器だった。顔にしっかりと固定されているそれが、花垣に呼吸をさせている。
     次いで、顔半分と頭を覆う包帯、固定された首。
     あまりの惨状に思わず顔を逸らすと、二の腕の付け根からから手まで、右腕全体を覆うギプス。

     は、と龍宮寺の呼吸が乱れた。
     利き腕を折られ、顔面を執拗に殴られ、そうして花垣は病院ここにいる。
     2年前の血のハロウィン。
     場地の死によって我を忘れた佐野は羽宮を殴り殺そうとした。けれど踏みとどまったのは、花垣の言葉があったからだ。花垣があの時声を上げたから、佐野は殺人に至らなかった。
     今回も、と思っていた。

     タケミっちの言葉ならマイキーに届く。

     龍宮寺はそう信じていた。
     今の佐野は関東卍會の総長で、堅気に戻った龍宮寺では会うこともできない。
     だから梵に入った。だから佐野に会うために奔走した。花垣が戻ってきたときには、これでもう大丈夫だと、柄にもなく安心もした。
     花垣が佐野に会うことさえできれば、未来から戻ってきた花垣をみれば。

     タケミっちがマイキーのために未来から戻ってきたことを知れば、何を考えてるか知らないがマイキーもきっと戻ってくる。
     あの頃みたいにみんなで笑いあって、バカやって喧嘩してツーリング行って、そうやって大人になっていける。

     そう、信じていた。
     ――信じた結果がこれだ。

     見ろ。
     耳の奥で誰かが叫ぶ。
     お前のせいだ。お前のせいでタケミっちが殺されるところだった。オマエがタケミっちに全部任せたせいで、タケミっちは死ぬところだった。

     オレのせいだ!!!

     唯一無事な左手に、刺傷がくっきりと残っている。
     8・3抗争。キヨマサに刺された左手。天国ってどんなっスかね? ボロボロで笑う花垣に、龍宮寺はなんて答えた?

     テメェは地獄行きだよ。

     自分だって刺し傷で失血死一歩手前のボロボロになりながら、龍宮寺は笑ってそう言った。花垣だってへらへらと「オレなんも悪いことしてないっスよ」なんて笑いながら言っていた。
     何にも悪いことはしていないのに、花垣は今度は一人で死にそうになっている。

     地獄じゃないか。

     これが地獄じゃなくて何だって言うんだ。
     花垣なら大丈夫だと、龍宮寺は信じていた。
     この小さな手が佐野を、自分を、救ってくれると、どうして信じられたんだ。
     龍宮寺が力の入らない手でどうにか握りしめた花垣の左手にはくっきりと刺し傷が残り、左足にも銃創が残っている。
     こんなに痛かったんだな、とぼんやりしてきた頭で考える。
     佐野はもう、手の届かないところに行ってしまったんだなと、薄れていく意識の中で考えた。
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