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    HakuKamijyo

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    形にならないものとか進捗投げ兼たまに完成品ログ

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    444の時の病引、番犬に連れられて散髪するの巻。
    拙宅引は444時マジ病み1000%なので髪の毛伸びてたりメンタルを壊している。

    空にいるときに邪魔にならないようにとか言われて短くされる。
    切ってちゃんと人の顔を見るようになるトリガーと、はじめてトリガーの顔を見た番犬。
    という落書きのラフだけあってこっちが先にできたが勢いだけで書いて今日読み直してなどない(くそ

    ##エスコン7

    散髪 懲罰部隊にやって来た『新入り』の顔を二度と見ることなどないだろうと、作戦初日に罪人共の賭けに乗った。
     偶然にも他の囚人たちと違い、連行される男の姿を一目見た優位性があったのだ。
    俯き、丸まった背のまま歩みを進める姿は生きるという意思を手放した、今にも絞首台に歩み出しそうな。まさに生きる屍のようだと感じたからだ。
     しかし空での彼は、指示も出さないうちから敵性航空機の背後を取り、丸腰状態でも臆することなく追尾し、攻撃の許可を出せばどの囚人よりも的確な働きを見せてのけ、『新入り』は罪線の数に違うことなく敵を葬り去り陸の牢へ帰還した。
     結果、バンドッグの財布の中身は囚人たちの懐へと消えた。
    トリガーと呼ばれた、その『新入り』はバンドッグの記憶にしかと刻まれることになった。
    以降も懲罰部隊へ下される作戦のどこかでくたばりはしないかと思いを抱きながら指揮をとったが、トリガーは極めて従順に任務にあたり、罪線の本数さえ見なければ模範囚に等しいとさえ感じるようになった。
    いつから彼への興味を持ったかはもはや定かではない。しかしある日看守として牢を訪れた際にそれは口をついて出た。
    「お前、いい加減髪を切ったらどうだ。」
    「え?」
    まさかそんなことを指摘されるとは思ってもなければ、余計なお世話ではないかと言わんばかりの気だるい疑問符が返ってくる。
    バンドッグ自身も発した言葉に面食らったが、囚人相手に遠慮する必要もないと判断し、いつも通りに言葉を連ねる。
    「前が見えなくなるようでは空に上げても使い物にならん。燃料代を無駄にしてくれるな。」
    「少なくとも空はちゃんと見えてる、多分」
    トリガーは指で前髪をつまんで見つめ、「まあ伸びてはいるけど……」と付け加える。
    腰が重い男だ。
    軍法会議で疲弊したのか、本当にハーリングのファンだったのか、鬱症状が出ているとこうも身なりに気を遣わないのか。
    言い方を変えるか。
    「目障りだ、切れ。」
    バンドッグは『命令』という形で、非番のトリガーを牢から連れ出した。

    ***

    「自由が利かないのに気にならない」
    基地に備え付けの床屋の椅子に座ったトリガーが呟いた。
    「囚人としてすっかり適応してるようだな」
    「罵詈雑言が上手い看守がついてるのは流石に慣れたな。」
    目元まで伸びきった髪のせいで視線こそ伺えないが、トリガーは鏡越しにこちらを見たようだった。その口角はうっすらと上がっている。
    こいつ。
    バンドッグはため息をついてトリガーを急かした。
    「どのぐらい切るのか決めたのか?……いっそ丸めるか、ん?」
    「それは嫌だな」
    「さっさと伝えろ、こちらも暇ではない」
    「ちょっと短くするぐらいでいい」
    「目がよく見えるようにしてやれ」
    理容師へ目配せすると、櫛とはさみがトリガーの赤毛を鋤いては切り、床へと散らしていく。トリガーは床に落ちていく毛をぼんやりと眺めているようだった。
    バンドッグは邪魔にならない壁際に身体を預け、はさみの金属音を聞きながら暇潰し程度に持ってきた書類に視線を落とす。
    監視という名目で付いてきておきながら、こいつは他の囚人のような悪さはしない、とどこかで感じていたせいでもある。
    目に見えて反抗的なカウント達でもな蹴れば、表面上は穏便だが何を考えているのかを計りがたいタブロイドのようでもなく、本当にハーリング元大統領を殺すなどという大それた罪を犯した人間なのだろうか。
    ━━罪人でなければここに来ることはない。
    トリガーに対する気の緩みを正すように反芻した。
    「終わったぞ、連れて帰りな」
    先程まで髪を切っていた理容師が話しかけるまで、監視など気もそぞろだったことに気づく。
    何故こうも緩んでしまうのか。
    「バンドッグ……?」
    手錠のついた腕を自ら差し出しながらこちらを伺う亜麻色の瞳に少し驚いた。
    今まで鼻の辺りまで野放図だった赤毛と俯きがちだったせいで、思い返せばきちんと顔など見たこともなかった。
    「少しはマシになったな」
    存外男らしく整った形の眉に赤い睫毛が縁取る瞳、たった今短く刈り揃えられた頭髪。
    髪を切っただけで印象はずいぶん変わるものだ。
    前髪を指先で撫でると、トリガーは目をしばたき視線をそらした。
    あと少し、本人が明るい顔でもすればそれなりに見ていられる顔になるだろう。
    「さあ戻るぞ囚人」
    手錠に鎖を繋ぎ前進を促す。
    トリガーが素直に牢へ歩みだそうとして、肩をすくめて立ち止まった。
    「あのさ、バンドッグ」
    「なんだ」
    トリガーはこちらへ背を向けたままだ。このまま話すつもりなのだろう。
    「髪を切って少しスッキリした。はじめてちゃんと貴方顔を見た気がする」
    「互いにな」
    バンドッグが観察している時、トリガーも同様だったらしい。
    まあ、俺の顔なんぞ見てる暇があるのなら空でより多くの敵機を撃墜してもらいたいところだが、嫌味を言う気分でもなく手短に返した。
    「今日はありがとう」
    髪を短く切ったせいで隠せなくなったトリガーの耳が赤くなっているのに気づいた刹那、彼は自ら牢へ歩き出した。
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