散髪 懲罰部隊にやって来た『新入り』の顔を二度と見ることなどないだろうと、作戦初日に罪人共の賭けに乗った。
偶然にも他の囚人たちと違い、連行される男の姿を一目見た優位性があったのだ。
俯き、丸まった背のまま歩みを進める姿は生きるという意思を手放した、今にも絞首台に歩み出しそうな。まさに生きる屍のようだと感じたからだ。
しかし空での彼は、指示も出さないうちから敵性航空機の背後を取り、丸腰状態でも臆することなく追尾し、攻撃の許可を出せばどの囚人よりも的確な働きを見せてのけ、『新入り』は罪線の数に違うことなく敵を葬り去り陸の牢へ帰還した。
結果、バンドッグの財布の中身は囚人たちの懐へと消えた。
トリガーと呼ばれた、その『新入り』はバンドッグの記憶にしかと刻まれることになった。
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