忠実なる、「かみさまはそんなことしなくてもいいんですよ」
フォークを拾い上げた手が空中で止まった。はた、と動きを止めた主人に、小さな従僕は首をかしげる。
仔鹿の運んでいた食器がぐらりと揺れて、上に乗せていたカラトリーがいくつか落ちてしまったのを、シルバーアッシュは後ろから見ていた。まだ幼い妹たちとそう変わらない背丈で使用人の真似事をするのが、どうにもかわいらしく思えて手を差し伸べたにすぎない。申し訳なさそうにするのは予想のうちで、けれど、口からこぼれた言葉は範疇の外だ。
「…かみさま、とは」
それはなんだ、と問えばクーリエは目を丸くした。そうして眉尻を下げ、口をもごもごと動かす。
「シルバーアッシュさまのことです」
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