AIのべりすと先生すげ~~◆寂しがり屋の猪/AIをまるで調教できてなかったので結局9割以上普通に書いた
夜風に軽くはためく浅葱色の外套の裾を握ったのは、無意識だった。
大修道院周辺の街は、この頃ようやくかつての活気を取り戻してきた。昼もそうだが、夜も同様だ。
宿場で出される酒も正規の商人から仕入れることが出来た。
少しはましな質の酒で上機嫌になった男たちが次に向かう先は女だ。
大修道院のお膝元と言えど、娼館が無いわけでもなく、街角には普通に娼婦が客を探している。
そんな夜の街へ遊びに、奢ってやろうか、という兄貴風を吹かせた年上の幼馴染の誘いを渋い顔をしてあしらっているもう一人の幼馴染の男の姿を見て、俺は何を思ったのだろうか。
パッと手を離した時には既に遅く。不機嫌そうな顔が斜め下からディミトリの顔を覗き込んでいた。
「なんだ、ディミトリ」
二人とも級長に小言をもらう生徒ではなく、とっくに大人なのだ。だからそういうことに口出しをする権利はディミトリにはない。
それにしてもこの男、視界が後ろまであるとでもいうのか。振り返る前には既にディミトリが自分の外套を掴んでいる事を察していた。
狼に例えられるような男だが、まさかな、と無関係な思考に入り始めたディミトリは慌てて言い訳を考え始めた。
「あぁ、いや、フェリクス。お前に話があって」
「そうか。何の用件だ」
何も考えていないが、話などいくらでもあるだろう。
などと雑に考えていたディミトリは、ある意味フェリクスらしいきびきびとした返しに一瞬だけ狼狽した。
それを目ざとく気付いたのは正面にいるシルヴァンだ。
「……あ、俺は外しましょうか」
「なんだ、立ち話で出来るようなものではないのか。そうならそうと言え」
フェリクスの怪訝そうな顔には疑問が残っているようだが、「そういうことだ、他をあたれ」とシルヴァンに踵を返した。
***
なんとなく、ディミトリの寮の部屋の寝台に、二人で並んで座った。
何とも言えない沈黙。この、拳二個ほどの距離を詰め、隙間を埋め、身を摺り寄せたい。
湧き上がる衝動を行動に移す前に、ディミトリは早々に音を上げた。
「フェリクス、すまない。話があるというのは嘘なんだ」
反動でうっかり情けない言葉を吐いてしまった。
「は?嘘だと?」
「……正確には、俺も、お前との時間が少し欲しくて…………。だが、どう切り出そうかと……それで、つい…………」
しどろもどろに言い訳をしてディミトリは寝台に腰かけた身を縮こまらせた。
お前のそのでかい図体でそんなことをしても無意味だぞ、という呆れた視線には気付いていないようだ。
妙なことを口走っているような気がしなくもないが、一度口から出た言葉は取り消せやしない。
「話ぐらい普通にしているだろ」
「お前と二人で、軍務と雑務以外の話を全くしていない。……俺のせいではあるが」
「その通りだな」
素っ気ない反応にディミトリの気分は落ちていくばかりだった。それを知ってか知らずか、フェリクスは続ける。
「すまない、俺はただ邪魔しただけだったな」
「フン。もとより夜遊びなどに興ずるつもりなど無かった。あいつは余計な気を回しているだけだ」
いつものことだ、とぼやくフェリクスにディミトリはどことなくむず痒さを感じた。これではまるで、自分の方が子供ではないか、と。
何かと固く受け止めがちなフェリクスのことだ。フラルダリウス領はファーガス内では比較的まともに機能しているとはいえ、突然の領主の出奔に加えて、突然の訃報だ。
民からの信頼も厚かった父親の後継としての視線に晒されている。
昔からフェリクスはその手の方面には気乗りしていないようで、父と折り合いが悪くなったことで拍車がかかった。今も、家を継ぐことに対してどう思っているのか推し量りがたいところがあるが、民意はフェリクスの意思を関係なく存在し、フェリクスに期待と猜疑を寄せる。
立場の近いシルヴァンはそのことをよく分かっているのだろう。余計な気、などと言うが、ああ見えてシルヴァンは人心の扱いに、そしてこの弟分に構ってやることに長けているのだ。
やはりたまの息抜きを邪魔するべきではなかったのだ。
「……お前たちはもういい大人なのだし、好きにしてよかったんだぞ?」
これはシルヴァンにも悟られているのだろうか。そもそも急に立ち直ったディミトリに対する周囲の態度は、級友を始めとした近しい者に限ってはディミトリ本人が気遅れするほど優しかった。
大変居た堪れないものであり、むしろ少々呆れているぐらいの他国出身の者や厳しい目を向ける兵士たち、そして一番はこの幼馴染の不遜な態度の方が気楽だというのに。
「なんだそれは。寂しかったのか?」
そんな不遜な男も今日はどうやら甘いらしい。
少し揶揄も入っているような調子はフェリクスにしては珍しい。思わずがばっと振り向いたディミトリの肩をフェリクスが軽く叩いた。
目の前には、珍しくも苦笑して目じりを和ませた、蘇芳色の優しい瞳がある。
「……あぁ、そうかもしれない」
油断していた。油断しきった言葉が出てしまった。
受け入れられたかった。許されたかった。そして――お前だけは、俺のことを見て、俺のことを好きでいてほしかった。
それを一番に欲していたから、一番に諦めなければならなかった。
今でもそれは変わらない。ただ、寂しいのだと、他ならぬ本人に分かってもらえているのであれば、それで十分だ。
「すまない、俺の我儘で時間を取らせて。少し、すっきりしたよ」
だからもう行っていいぞ、と解放してやろうとするが、フェリクスは動かなかった。
「ディミトリ」
「どうし」
た、の音に被せるようにフェリクスは少し早口で、ディミトリに告げた。
「俺はお前が好きだ」
「……え?」
フェリクスが発した言葉の一字一句がディミトリの頭を数度巡る。だが、少なくとも三度ほどは廻らなければ言葉の意味が呑み込めなかった。
発した本人は僅かに居心地の悪そうな素振りを押し隠すようにして腕を組み、口の端を無理矢理上げて皮肉っぽい笑みを作り、ディミトリを横目で見た。
「そう言ってほしそうな顔をしていた」
「な、な、なんだそれは……!」
「昔のお前は俺にそう言わせては阿呆みたくヘらへらとしていたな。何が良いのかと思ったが……なるほど、存外悪くない」
「ま、まて、フェリクス、ちかい」
気恥しさが吹っ切れたのか、フェリクスはディミトリの手に己のそれを絡めた。
「このくらいの距離など今更だろう。ディミトリ。俺はお前のものだ」
「……っ、やめ、フェリクス……!」
フェリクスの薄い唇がディミトリの耳たぶを掠める。吐息の温度が脳にまで届きそうだ。触れた場所から燃え広がるように発熱している。
「何をせずともお前が好きだ。……あんな顔で引き留めずとも、お前が望むことぐらい、」
「ま、ま、待ってくれって言ってるだろ!」
素直でないのがフェリクスのはずだ。好意をこのように軽薄に告げるなど、悪いものでも食べたのだろうか。むしろ正気を疑うべきは自身の方だろうか。都合の良い夢でも見ている、願望のあまり幻聴が――
ふとディミトリが我に返ると、硬直して押し黙っていることを心配しているのか、不安そうな瞳が見上げている。相変わらず握られた手はその感触を確かめるようにぎゅっと握られている。
「フェリクス、冗談なら、その、ほどほどにしてほしい。真に受けてしまう」
「真に受けるも何も、昔お前へ告げた言葉を、嘘にしたことなど一度も無い」
フェリクスは狡い。ディミトリは恨めし気にフェリクスを見た。真剣な顔だ。冗談などついたことは無いとでも言うような。
疑うまでもなく本心から言っていると、言葉以外で伝えてくるのだから厄介なのだ。
胸の奥がぎゅうっと締め付けられるような心地になる。ディミトリは苦しくなるほどに嬉しくて、それがやはり妙に悔しかった。
「……近づくな、だなんて言っただろう」
「罵倒を真に受けて全面的に従う方がどうかしている。俺は一度もお前を嫌いと言っていない。そう言ったのはお前だ」
「暴論だ、お前はいつも怒っていたじゃないか」
「……お前はこの期に及んで俺が何に怒っていたのか理解していないのか……」
フェリクスが半眼で睨むと、慌てて目を逸らしたディミトリは何とか弁解の言葉を捻りだした。
「ちが、くは、いや……多少は理解している……はずだが……」
「その顔は理解していないな。まあいい。一つ教えてやる」
諦めたように溜息をついてフェリクスは立ち上がり、ディミトリの方へ手を伸ばした。
「わ、」
「愛を乞いたいのは俺の方だったのだがな」
「……フェリクス?」
サラサラと、前髪が崩れないようにそっと触れる手のひら。頭を撫でる感触は、一体いつぶりだろうか。
「だが、どうも待つのは性に合わなかったらしい」
「何をだ?」
「人に慣れん猪が懐くのを待っていた俺の方が馬鹿だったな」
「おい、なんだその言い……っ」
そう言うと同時にフェリクスがディミトリの髪の毛をかき分けて素早く額に唇を押し当てた。
「どうだ。俺はこのぐらい容易い。外套の裾なんぞ物の数には入らんぞ」
フェリクスはニヤリと笑ってディミトリと額をつけた。心臓を直に触れられたように、しかし優しく撫でられたかのようにざわざわする。
どうにもフェリクスのペースに乗せられているようで、むっとしたディミトリは唇を尖らせる。
「俺だって、お前が良いと言うならそのくらい」
「そうやって許しを請う時点でお前の負けだ」
勝利を確信した男は、ゆっくりと唇を近づけた。
◆AIが天才的に解釈合致の文章を生成したので殆ど自分で書いていない
「ん~~~っ」
フェリクスの思考が停止した。
何が起きているのか。唇には酒気、体温、少し柔らかくて己のそれより薄いもの。
「ふぇりくす、すきだ……」
目の前には普段の堂々した王の佇まいはどこへやら、酔っ払って身体の芯が抜けたようにフェリクスに纏わり付きじゃれる猪もといディミトリが至近距離で緩んだ顔を晒していた。
「………………おい、お前は何をしている?」
「ん? 口づけだが?」
「何故そんなことをする?」
「好きだから」
「誰を?」
「ふぇりくすを」
「何故俺なんだ?」
「好きになってしまったからだな」
「…………」
フェリクスは頭を抱えたくなった。
この男は何を言っているのだ。
好きになったから口づけをするだと? 意味がわからない。
しかも相手はあの猪だぞ。
そもそも男同士ではないか。
フェリクスは混乱し、そして苛立った。
なんなのだ、この男は。
どうしてこんなにも腹立たしいのか。
フェリクスはディミトリを押し退けると、その肩を掴んで揺さぶった。
酔っているせいか、ディミトリはされるがままになっている。
「おい! お前は一体何を考えている!?」
「俺はお前が好きだから、口づけをした」
「それはわかった! だが、何故俺なんだ!」
「何故と言われても困るな。好きなものは仕方ないだろう?」
「ふざけるな! お前の……そういう対象は男ではないだろう!?」
「ああ、そうだな。でも、お前を見ていて気づいたんだ。俺はお前のことが好きだったらしい」
「はあ!?」
「そういえば、シルヴァンにも言われたな。『殿下はフェリクスのことをよく見てますね』と」
「…………」
「フェリクスは綺麗だし、強いし、剣を振るう姿なんか惚れ惚れするほど格好良いし、それに、俺のことを見てくれる目が優しいところも好きだ」
「…………」
「あと、お前の声も好きだ。低くて落ち着く声音で名前を呼ばれると胸がざわめく。それから、お前の手も好きだ。剣ダコがある手は努力家の手だと思うと愛おしく感じる。それから、お前の顔も好きだ。いつも眉間にシワを寄せているのに、笑うと目尻が下がって可愛いと思う。それから、お前の髪も好きだ。さらさらしていて触り心地が良い。それから、お前の匂いも好きだ。香水をつけていないのに、どこか甘い香りがして安心する」
「…………」
「それから、お前の全部が好きだ」
「もういい! 黙れ!!」
フェリクスは耐えきれず叫んだ。これ以上聞いていると頭がおかしくなりそうだ。
「じゃあ今度はお前の番だな」
上機嫌そうにフェリクスにしなだれかかるディミトリはフェリクスの皺の寄った眉間を指を撫でさすりながら笑みを浮かべた。
「おい、何を言っている……」
「ああ、俺ばかりでは不公平だろう? お前のことも教えてくれ」
「…………」
「フェリクス?」
「……俺は、」
ディミトリが好きだ。愛している。自分自身、その感情を深く考えることもなく、ディミトリに改めて伝えたいとも何かしてほしいとも想像したことがない。
だがこいつはあろうことか口づけを仕掛けてきた。一体何を言わせようと言うのか。
「フェリクス?」
「…………俺は、お前が嫌いだ」
「えっ」
「お前は猪で、馬鹿で、人の話を聞かず、すぐ突っ走る。お前のそういうところが大嫌いだ」
「そ、そうか……」
ディミトリは傷ついたような顔をしたが、フェリクスは構わず続けた。
「お前がいくら俺を褒めようが好こうがそんなもので俺は動かん。それはお前の自己満足だ。……俺がお前を嫌おうと、居なくなっても、お前はそれで諦める、その程度なんだろう?」
酩酊した思考でも、その言葉が寂しさを孕んでいることは察するに容易かった。
「そんなわけない!」
ディミトリは即座に否定した。
「俺はお前が好きだ! お前がいなくなるなんて考えられない! お前は俺のものだ!」
「…………」
「だから、俺から離れるな。ずっと側にいろ。俺のそばから離れていくな。お前がいない世界なんて、俺には意味がないんだ」
ディミトリはそう言ってフェリクスを抱きしめた。
その腕の震えにフェリクスは息を呑む。
「お前は俺のことが嫌いかもしれないが、俺はお前が好きだ。お前が俺を好きになってくれるまで、何度でも言う。好きだ、フェリクス。お前を愛してる」
「…………」
酒精に溺れた人間の弱々しい本音。このような形で言わせてしまったことにフェリクスは罪悪感を覚え、しかし、焦がれた相手の切実な想いを聞いて、歓喜せずにいられようか。
ディミトリはフェリクスを抱きしめたまま、その肩口に顔を埋めて呟いた。
「どうか、お願いだ。俺も、お前のものにしてくれ」