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    時雨子

    フェリディミ

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    時雨子

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    リハビリ?AI文章を小説として体裁を整えようとしたら前置きだけで独立した話になった。今回は自力です

    ◆醜い傷もディミトリの一部だから全部まるごと愛する事で自分の拗れ感情を大雑把に解いたフェリクスと、まだ線引きに拘る頭の固いディミトリ



    愛している。

    そう告げたのは何も特別な事も無いただの昼下がり。特段、情緒のある場所に連れて来たわけでも無く、強いて言うならば久方ぶりに二人きりで誰はばかることも無かったからだ。
    それは、事実を述べたまでだった。俺にとって自明であり当然の事で、口に出すまでもなく、さりとて口に出したところで何も問題は無い。
    何か言葉の綾か?と首を傾げたディミトリは王城の庭にある簡素の東屋の下、油断しきった顔で俺の言葉の意図するところは何かと疑問符を浮かべている。
    ならば教えてやろうと手の甲に恭しく口付ければ、さすがに眼が満月のように丸く見開かれ、血の気の薄い肌は夕陽が差したように朱が広がった。

    「え、そ、その、フェリクス?」
    ――どっちだ。どっちの意味なんだ。熱烈な忠義か。家族愛に類するものか。友愛の範囲の話か。
    それとも、いやまさかもしかして艶めいた意味が含まれているのか。
    そんな疑問は声に出さずとも駄々洩れだ。
    焦ることなくゆっくりと黒の手袋を外した。飾り気のない無粋な革の下に隠されているのは、凍傷に切り傷に何が原因かも分からない傷だらけの手だ。
    武人、いや剣士たるもの、手には並々ならぬ拘りがある。武人の手はその人物の歴史を語ると言っても過言では無い。
    目を背けたくないようなこの手も、ディミトリがここまで生き抜き、道を切り開いてきた証だ。
    己の不甲斐なさを呪いたくなると同時に、傷すら含めて今のディミトリなのだから、不思議と愛おしく思えてくる。
    再度改めてその手の甲に唇を押し当てると、大げさに肩が跳ねる気配がした。
    だが、これは嫌がっての事ではないと手に取るように分かる。顔を上げずとも、細やかな愛撫を受ける己の手に釘付けになっている視線が脳天を刺し貫かんばかりに注がれているのだから。
    「ふぇ、ふぇりくす……手を」
    「何だ、照れているのか?」
    普段から昔のフェリクスはどうだ、ああだ、などと嬉々として如何に自分に懐いているのか語るくせに、と揶揄を込めて指を搦めとり、更に指先に口付ければ面白いほどに顔が赤くなる。口が笑みの形に広がるのがどうにも抑えがたいというのも仕方が無い。
    赤く熟れた頬に手を伸ばし、優しく撫でるとその温度が、感情が、己の指先から流れ込んでくるような錯覚を覚えた。
    「フェリクス…その、俺を愛しているというのは、俺をどうしたいんだ」
    しどろもどろに呟かれた言葉尻は、妙に臆病そうだ。
    ――これだからこの男は仕方ない。
    以前であれば不機嫌を隠さずにお前は何も分かっていないと八つ当たりをしただろうが、俺とて学習する。
    「ただ愛しているというだけだ。それ以上に何か必要か?」
    「あ、愛しているとか軽々しく言うような奴じゃないだろうお前は!」
    耐えきれなくなったのかディミトリは弾かれたように俺の手から離れた。
    「俺はよく理解したのだ。お前相手には本題から入らねば埒が明かないとな」
    「なんだそれは……」
    「自分の胸に聞いてみろ」
    「……大体、そんな都合のいいことが」
    「ほう?」
    ディミトリはハッとして己が口を滑らせたことに気づいた。
    そう、ディミトリは必死になって俺の愛を否定している。そんな都合のいいことがあるものかと。
    自罰的なのもここまでくれば呆れ果てるのみだ。
    「俺に愛されるのがお前にとって都合の良いことか。喜べ。都合よく俺はお前を愛している」
    「ッ俺のどこがいいんだ!?お前を失望させ続けてきた俺が……」
    確かに怒り失望し嫌悪したことはある。だからこそそれを全て受け止めているのだ。
    そんなことも分からんのかこの馬鹿は、と俺は溜息をついた。
    「それで終わると断じていれば俺は公爵の位にすら付かんだろう。俺は目の前にいるお前を見て言っている」
    「だとしてもまだ帳尻が合わない」
    「お前の中の帳尻が合うのを待っていれば墓場まで持っていくことになる。それとも何か他にお前のどこを愛しているのか囁かれたいか?」
    強欲な奴め、と揶揄すればディミトリは珍しく短気に畳みかけるよう、言葉を重ねてきた。
    「そんなもの、あるわけないだろ!柔い乙女でもなければ全身この手のように固く醜い傷だらけの男に何を言っているんだ!獣を愛でる趣味でもあるのか!」
    あろうことか、世界で一番美しい生き物は愛されることに引け目を感じているのだ。
    乙女がどうたらというのはともかく獣は俺が投げつけてきた言葉だ。それを忘れたわけではない。
    今更、あの獣の顔を思い出したとて揺らぐはずもないだけである。随分と舐められたものだ。
    「趣味ではない。醜い獣の名前がディミトリであるならばこそ、お前がいい」
    「そんな……俺なんかに……」
    そろそろこちらも我慢の限界が近づいてきた。ディミトリににじり寄っていた身を引いて距離を取った。
    「だが、お前が俺に何も欲するところが無ければ何も変わらん。せいぜい愛されていることに慣れろ」
    態と声の温度を下げて淡々と告げればディミトリの顔から躊躇いが吹き飛んだ。
    「……今宵、いいや今ここで。俺を好きにしていいと、好きに愛していいと言えば、お前は何をしてくれる?」
    「そうだな。手を握り抱き締め接吻をし……」
    ディミトリが期待に満ちた、それでいてその表情を隠そうと必死な顔で見つめてくる。
    いつも余裕のある能天気な顔をこうも崩せるのは気分がいい、が。
    俺は強欲なのだ。好いた者を一方的に好きにすると言われて従うだけでは満足行かない。
    「……寝台に誘い、共に寄り添って眠ってやろう」
    愛おしむようにディミトリの目の下の隈をなぞり、緩く撫ぜて頭を引き寄せた。腕の中で固まるディミトリから困惑が伝わってくる。
    「…………フェリクス。俺には境目が分からない」
    「お前は愛せと言った。目の下に隈を作っている奴へ相応の態度を示した」
    「……いや、醜い身体だから当然だな、うん」
    「何を言う。俺はその傷、その肌の全てに触れたい」
    「だからフェリクス!それでは境目が分からないぞ!」
    俺とて男、好いた者と親密な、つまり素肌を交じ合わせる行為を考えないこともない。接吻もその一部に過ぎない。
    だが、事を急いてはいけない。此奴曰く『醜い身体』だろうと関係無い。ゆっくりとその肌に熱を与え分け、共に感じ合いたいのだ。
    「好いた者に直に触れ合いたいというだけだ」
    ディミトリは先ほどから何やらよく分からない呻き声をあげている。
    気になるのならば直截に抱きたいのかと聞けば抱きたいと答えるものを、どうやら羞恥が勝っているようだ。
    「調子が狂うな……その、つまり、家族?のように愛してくれるならば、そこまで甘やかされるのは、なんというか、よくない」
    「家族でなければいいのか。そも、情の枠など必要か」
    「枠が無ければ際限なく求めることになる」
    「どのみち俺は欲するところがあれば枠など壊す。このようにな」
    「……っ」
    ディミトリの頭を両手で引っ掴み、逃げられないようにして唇を奪った。少し冷たい唇は、角度を変えて擦り合わせるごとに熱く湿ってくる。
    「っは、どうだ。壊すなど簡単だ。お前もやってみろ」
    呆然としているディミトリは、今にも倒れそうな顔をしている。言葉を失ったかのように口をパクパクとさせている男の腰を取って座らせてやり、じぃっと見つめること数秒。
    ようやく言葉を取りもどしたディミトリは引き倒すように俺の腕を掴んで縋りつき、こう囁いた。

    「やっぱり俺には分からない。でも……お前に壊されたい」

    熱に浮かされたその瞳に写る情愛は、とうに境界を決壊していた。
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    km64_lf

    DONEレノフィが膝枕してるところに晶くんが通りがかるだけのはなしです。
    謎時空。
    ふたりにとってはいつも通りだけど、側から見たら明らかにいちゃついている……というのと、
    甘えたなレノさんを書きたいという欲望をずっと持っていたので、
    すごく楽しかったです。
    膝枕をするレノックスとフィガロ 日が穏やかに照り、風がそよ吹く気持ちの良い午後。晶はキッチンへ行こうと、魔法舎の廊下を歩いていた。窓外に楽しげにはしゃぐ子どもたちの声がして、その穏やかで平和な様子に思わず笑みが浮かぶ。今日は任務がなく、訓練も午前の内に済んで、いまは各々が自由な時間を過ごしていた。
     晶は談話室の前を通りかかって、足を止めた。意外な光景に目を奪われて、思わず凝視した。
     談話室自体の様子は、穏やかな午後といった感じで変わったところはない。だが、そのソファを占有する二人組の様子が、晶にとって意外だったのだ。
     ソファを占有していたのは、フィガロとレノックスだ。彼らはふたりとも本を読んでいた。上着を脱いで、くつろいだ様子。ここまでは、意外でもない。だが、座るフィガロの腿に頭を乗せて、レノックスがソファに寝転んでいた。それが意外だった。
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