癒やしの笑顔 黒塗りの車に横付けされたと思ったらあっという間に車内に引きずり込まれた。一郎はまたか思った。
「報連相とかないんすか、パイセン?」
車の中にいた男は一郎を引きずり込む事に成功すると、一郎には見向きもせずに運転手に車の発進を命じて自分は煙草を取り出した。
「出かけるぞ」
「事後承諾だし! 俺の意思無視!」
「……何か用あったんか」
用という用はない。夕飯を作って食べて今買ってきたラノベを読むつもりだったくらいだ。ラノベより二週間音沙汰のなかった左馬刻との時間を優先させる。
「別にねぇけど」
「ならいいじゃねぇか」
俺様だなぁと思う。
「弟たちに連絡入れていい?」
一郎はスマホを取り出す。前にこうやって連れ出されるところを地元住民に目撃されて、それが周って二郎の耳に入り「兄貴が拉致られた?!」と騒ぎになった。拉致されたのは事実だが犯人は俺様の彼氏様だから心配はないとメッセージを送る。
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